「サイレントヒル」4つの新作が意味するものとは 名作シリーズの“挑戦”について考える

 以降は、今回の番組でとくに注目したいタイトルを3つピックアップ。番組中で判明した情報などをより細かく紹介していこう。

リメイク版『サイレントヒル2』

 シリーズ最高傑作とも言われる『サイレントヒル2』が発売されたのは2001年。今回のリメイクはじつに21年越しとなる。公開されたトレイラーからは、当時とは比較にならないほどに進歩した技術で描かれる名作を垣間見ることができた。ジェイムスと思しき男の顔に刻まれた皺や、街に降る雨、建物にこびりついた汚れに光陰の加減なども鮮明に描写されている。

SILENT HILL 2 ティザートレーラー (4K:JP) | KONAMI

 番組に招かれた伊藤氏や山岡氏は、ともにオリジナルの『サイレントヒル2』を手がけたスタッフたち。進行役を務めた岡本氏曰く、伊藤氏に声をかけたのは約3年前で、今回のリメイクを発表するにあたって入念に時間をかけたことがうかがえる。

 山岡氏はビデオメッセージのなかで当時を振り返り、『サイレントヒル2』であれば新しい音楽を作れると感じていたこと、そして20年以上愛される作品の音楽を作れて良かったことなどを語った。一方、かつてディレクターからドストエフスキーの『罪と罰』を読んでほしいと言われ、どのようなゲームを作るつもりなのか不思議に思ったという小話も。

 本作の開発を手がけるデベロッパー・Bloober Teamは、『The Medium』や『Layers of Fears』といったホラーゲームを数多く手掛けてきた。本番組のためにビデオメッセージも寄せており、CEOのPiotr Babieno氏によると、『サイレントヒル2』がきっかけでホラーゲームを好きになったスタッフが多いという。また、『サイレントヒル』の世界観を壊さないよう、リメイクにあたって伊藤氏や山岡氏とも緊密に協力している。

 原作の良さを引き出すのはもちろんだが、現代向けに改修も加えている。例として、プレイヤーが作品の世界にできるだけ入り込めるよう、視点を主人公の肩越しにしたことが挙げられていた。ビデオメッセージにはモーションキャプチャーを使った収録風景も収められており、アクション面にも期待できそうだ。

『サイレントヒル Ascension』

 『サイレントヒル Ascension』の開発を担当する会社のひとつ、GenvidでCEOを務めているJacob Navok氏によると、本作は数百万人が同時に見守る、ライブ・インタラクティブ・シリーズになるという。参加者は物語の結末を変えたり、特定のシーンに登場することもできる。

SILENT HILL: Ascension ティザートレーラー (4K:JP) | KONAMI

 公開されたトレイラーでは、なにかの機器でメッセージをやり取りする場面も見られた。詳細は不明だが、作中の人物たちの行動を、プレイヤー側が直接指示するような感じになるのだろうか。Genvidと同じく本作の開発会社のひとつであるBehaviourのChris Ferriera氏によると、今回のストーリーに“リセットボタン”は存在しないとのこと。『サイレントヒル』は過酷な物語が多いだけに、プレイヤーに求められる責任も重そうだ。

 余談だが、2022年6月に発売されたホラーアドベンチャー『クアリー ~悪夢のサマーキャンプ』にも似たシステムがある。本作のマルチプレイでは、プレイヤーは最大7人の視聴者を招待でき、表示された選択肢のうちどれを選ぶのかを8人が多数決で決めることができた。『サイレントヒル Ascension』では、そのさらに大規模なものを作ろうとしているのかもしれない。

『サイレントヒルf』

 『サイレントヒルf』の舞台になるのは、1960年代の日本。映像を見る限りでは、田園が広がる田舎町、周囲を侵蝕する血管のような謎の管やセーラー服を着た少女、辺り一面に割いた彼岸花に、植物かなにかに侵蝕された人物が確認できた。

SILENT HILL f ティザートレーラー (4K:JP) | KONAMI

 シナリオを担当するのは、『ひぐらしのなく頃に』や『うみねこのなく頃に』などを手がけてきた竜騎士07氏。クリーチャーとキャラクターデザインは、ホラーゲームの『NG』やアーケードゲーム『ロード オブ ヴァーミリオン』を始め、多くの作品に携わってきたkera氏。また、台湾のゲームデベロッパーであるNeobards Entertainmentが開発を行う。本デベロッパーは、PS5/Xbox Series X|S/PC版の『バイオハザード RE:2』、『バイオハザード RE:3』などを手がけてきた実績がある。

 『サイレントヒルf』でもっとも特徴なのは、舞台が日本であることだろう。「サイレントヒル」は第1作以来、洋風の世界観を貫いてきた。つまり和風を採用するのはシリーズ初の試みとなる。

 世界観が大きく変わることに不安はあるが、キャラクターの精神が世界観に強く結びついている『サイレントヒル』と、心霊を始めとする超常的な脅威を遠回しに描くことで、精神的な恐怖を増幅させているジャパニーズホラーとの相性は、意外にいいのではないかとも個人的には考えている。とはいえ、なにを判断するにも情報が不足しているので、ひとまずは続報を待ちたいところだ。

 『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!』や『スーパーボンバーマン R2』など、コナミを代表する有名タイトルが、ここ数年家庭用かつ据え置き機向けゲームとして頻繁に登場している印象がある。今回「サイレントヒル」の新作が4つも発表されたのは、コンシューマーゲームに力を入れるというコナミの姿勢の表れなのかもしれない。ひとまずは、同シリーズの今後の新たな動きに注目したい。

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