動物系チャンネル「inosemarine」が視聴者に与えてくれた活力 半年ぶりの動画投稿再開を機に振り返る

 昨今、YouTubeでは動物たちの動画が大人気だ。動物好きの視聴者にとって、彼らが日頃の愛くるしい姿を見せてくれる動画はたまらない。日頃の癒しであり、未来へのパワーを与えてくれる励みでもある。

 そんな動物系チャンネルの中でも歴史が古く、日本に加えて海外でも人気のYouTubeチャンネル「inosemarine(イノセマリン)」をご存知だろうか。チャンネルを盛り上げているのはメスの柴犬マリとその飼い主、猪瀬さんだ。チャンネル内には、マリと猪瀬さんが繰り広げる珠玉のコントが数多く投稿されている。

 YouTubeでの投稿開始は2009年で、約13年前と非常に古い。中にはわずか24秒の動画でありながら3,500万回以上再生されている「師匠のオーラ」をはじめ、2015年の動物部門で1位に選ばれた「邪魔されクッキング」などさまざまな人気動画がある。2022年時点で、動画の全再生数は1億3,500万回を超えた。

邪魔されクッキング

 マリは当初猪瀬さんの父親が飼っていたが、父親が亡くなったタイミングで猪瀬さんがマリを引き取って育てることになる。猪瀬さんはマリと暮らしながら、一緒に撮ったコント動画を投稿していくうち、マリの持つ才能に気づき始めた。やがて視聴者たちから「中に人間が入っているのでは」と疑われるほどの芸達者ぶりが話題になり、いつしか柴犬と人間のコンビとして人気者になっていく。

 あまりの人気ぶりに、企業とのタイアップやテレビの取材などを日々こなすようになり、2014年には新作動画やメイキング映像などを盛り込んだDVD「柴犬マリのしばしばい〜1人と1匹のコント集〜」が発売された。(https://www.amazon.co.jp/dp/B00JDSYCOU)

 マリと暮らし始めて数年、気づけば飼い犬と飼い主という垣根を超え、まるで夫婦のような関係になっていた。しかし、犬の寿命は人間よりも短い。中には猪瀬さんがペットロスに陥ることを心配し、マリの他にもう1匹犬を飼ってはどうかとすすめる人もいたというが、猪瀬さんはマリだけを大切に育て続けた。動画の需要が増えてもマリの体調を優先し、投稿を急ぐこともなかった。

 チャンネル開設から8年ほど経つと、投稿頻度は1年に1回ほどに減る。若くて元気だったマリは歳を取り、この頃はすでに自力で歩くことすら難しくなっていた。

 やがて2021年11月20日、マリは息を引き取った。17歳、人間でいえばおよそ84歳に当たる大往生だ。静かに眠るマリのそばで、猪瀬さんがギターで弾き語りをする「生きる天才 柴犬(お別れ動画)」は多くの視聴者たちの涙を誘い、コメント欄には長い間楽しませてくれたマリへの感謝のメッセージで溢れた。

生きる天才 柴犬(お別れ動画)

 そしてマリが永眠してから約半年後。何と「inosemarine」にて再び動画が投稿され始める。そこには生前のマリと撮影した当時のボツ動画や、彼女が足のリハビリに励む様子が映っていた。多くの視聴者たちから喜びのメッセージが数多く寄せられ、コメント欄は再び賑わった。

3番目の犬【第12管区海上保安部】(生前動画)

 マリが亡くなってからすでに半年以上が経過しているが、当時の元気で可愛い姿は今もチャンネルに残されている。猪瀬さんとの息はバッチリで、どちらが欠けても決して成立しないであろう面白さと愛情に溢れた動画ばかりだ。

 今までこのチャンネルを知らなかった方も、ぜひマリと猪瀬さんの珠玉のコントを見に行ってみてほしい。きっと心が温かくなって、明日への活力を与えてくれるだろう。

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