ゲームは本当に「リアルなほうがいい」のか? 『エースコンバット7』や『グランツーリスモ7』の例から考える

ゲーム内でウィンドウショッピング

※以下で出てくる話題はすでに公式が対応しており、環境は大きく改善していることをあらかじめ書いておく。

 1997年以来続く「グランツーリスモ」シリーズの最新作として、2022年3月に『グランツーリスモ7』が発売された。第1作から一貫して、本シリーズは現実さながらのリアリティが売りだ。とくに本作では伝説的なF1ドライバーのルイス・ハミルトンを始めとする多くのアドバイザーが携わり、現実のレースで起こり得る要素がゲーム内に綿密に詰め込まれている。

 異なる速度域やタイヤの摩耗具合、路面のコンディションなどにより、車の挙動は逐一変わる。ハンドリングではつねに繊細さが求められ、車に無理をさせようとするとすぐに滑るかクラッシュしてしまう。AIが操作する車すら事故を起こすことがあるので、その難しさは折り紙付きだ。

 その難しさを越えたさきにある達成感や臨場感こそが『グランツーリスモ7』の魅力なので、ゲーム的なエース体験とリアルな天候要素がぶつかった『エースコンバット7』とは事情が違う。『グランツーリスモ7』は数十時間は遊んだが、本作はシミュレーターとして完成されているし、一介のレーサーになれる没入感には文句のつけようがない。ただ、現在は改善されているが、発売当初は賞金の要素で問題があった。

 本作では、高性能であったり「レジェンドカー」と呼ばれる希少価値が高い車には億単位のお金がかかる。手に入れるためにはレースを何度もこなして、必要な賞金を稼がなくてはならない。だがどのレースでも稼げる額が軒並み低いために、1台手に入れるにもかなりの時間を要する。これが当時のプレイヤーから不評だった。理由は単純で、レースを1回こなすことに対してもらえる報酬が少ないためだ。プレイヤーが払う努力と、ゲーム側が与える見返りにズレがあった。

 今後の展開を伝えきれていない状態で一部レースの賞金額を下げてしまったこともあり、賞金の額に対する批判はより強くなっていた。プロデューサーの山内一典氏は、公式サイトで賞金の問題に言及。得られる賞金を見直し、課金なしでも本作を楽しめるようにしたいと答えたうえで、「クルマの価格も、その価値や希少性を表現する大切な要素ではあるので、実勢価格とのリンクは必要です」(原文ママ)と語った。

 『グランツーリスモ7』は元々リアル志向なので、現実の価格がゲーム内にも適用されることに違和感はない。時代を経るごとに車の価値がいかに変わっていくのか、テレビで見たあの車はどれほどの値段がするのかを、むしろプレイヤーが知るいい機会でもある。山内氏の発言を読む限り、こうした賞金と価格の関係は、車の価値を実感させるための仕組みとして当初調整したのだろう。

 だが、せっかくゲームを買ったのに、希少な車をいつ買えるか夢見ながらウィンドウショッピングだけで済ませるのは、やっぱり寂しい。『グランツーリスモ7』に限らず、現実では一生かけても買えないような車を自由に乗り回せるのがレースゲームの強みなのだから、それを活かせない手はない。賞金額を増やして見返りを改善すれば、プレイヤーは好きな車を求めてレースに積極的になる。結果、努力したプレイヤーは好みの車を乗り回し、見返りを提供したメーカーの評価は上がる。双方にとって良い話だ。

 発売から約1カ月後の4月7日にはアップデートが行われ、レースで得られる賞金は全体的に増額された。レース自体のバリエーションも大幅に増え、世界中のサーキットで賞金を効率的に稼ぐこともできる。本項の冒頭でも書いた通り、本作のお金稼ぎは以前と比べてかなり楽になっていることは言っておきたい。

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