大規模経営統合、ASMR、期待の新型VRヘッドセット――壱百満天原サロメ100万人の裏で起きたVTuber・VR業界の変化

サロメ100万人突破の裏で起きた「業界の変化」

 6月7日、「にじさんじ」に所属する壱百満天原サロメのYouTubeチャンネル登録者数が100万人に到達した。初配信から14日目の達成であり、VTuber史上最速、国内YouTuberで見てもトップクラスの早さだ。100万人登録達成者は年々増え続けているものの、わずか2週間ほどでの達成は類を見ない。歴史が塗り替わった瞬間と言えるだろう。

 その翌日は、「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社の新規上場日となった。こちらも、連日ストップ高を記録し、時価総額は1600億円超になったとの報道も見られるなど、非常に大きな注目を集めていることがうかがえる。上場と壱百満天原サロメの、二重の注目が「にじさんじ」に注がれている状況だが、ここからさらなる高みへ登っていくことを期待したいところだ。

 先週は大きな業界変化の動きも見られた。バーチャルミュージックプロダクション「RIOT MUSIC」を運営するBrave group株式会社が、13.7億円の資金調達を行うと同時に、VTuberグループ「ぶいすぽっ!」運営の株式会社バーチャルエンターテイメント、およびバーチャルアイドルグループ「Palette Project」運営のMateReal株式会社を、M&Aで経営統合したことを発表したのだ。

 音楽展開と3Dモデル運用知見のある「RIOT MUSIC」、eスポーツプレイヤー/ストリーマー寄りの人気タレントを多く抱える「ぶいすぽっ!」、息の長いバーチャルアイドル運営を行ってきた「Palette Project」がそれぞれの裁量権を維持したまま、グループ経営へと体制を移行する形だ。持ち味の異なる3グループが、相互協力によって大きく羽ばたく可能性が芽生えていると言えるだろう。業界に新たな変化が生まれることを期待したい。

 別の意味でVTuberシーンに変化をもたらしそうな出来事もあった。YouTubeの「子どもの安全に関するポリシー」が改訂され、未成年者が出演する特定コンテンツの投稿の禁止が明言されたのである。その中の一つに、ASMR(聴覚や視覚に心地よい刺激を与えるようなコンテンツ)が挙げられている。この規約改訂によってか、チャンネルをBANされたVTuberが一定数現れ、事態を重く見てASMR動画や配信を非公開化するVTuberが続出した。

 規約改訂の意義はもちろん、実在の未成年保護であり、その点においては順当な対応だ。しかし、メタな話になってしまうが、「見た目は未成年だが実際は成人済み」のVTuberにとっては、大きなとばっちりである。ASMRを主軸に据えたVTuberにとっては死活問題に等しく、そうした状況を見て別のプラットフォームが「勧誘」を始める動きも見られた。もしかすると、半年後には拠点をYouTubeの外に置くVTuberが増える可能性もあるだろう。

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