空間演出ユニットhuez「3.5次元のライブ演出」第七回(後編)

「緑はNG」「白の出し方が難しい」……huezに聞く、“バーチャルファッションショー”の難しさ

ーー今回、ayafujiさんは撮影監督もされているんですね。

ayafuji:モデルさんのカメラワークの指示は現場でやらせていただきました。僕が適任だと思ったのはそもそも服が好きで、さらに普段からkillremoteの服を着ておりその良さを理解していたからです。モデルさんのポージングやカメラワークを考えるときも、大胆な切り返しを映したいとか、初めて使う生地を寄りで映したいとか、事前にデザイナーにヒアリングして臨みました。最終的には空間が映えるような表現になるよう、カメラマンさんにカメラワークも考慮してもらったんです。つまり、彼らの服をわかっていてなおかつ、バーチャル空間でのアウトプットがイメージできないと務まらないポジションだったと思うんですよ。

ーーディレクターという仕事についてはいかがでしたか。

ayafuji:動画やワールドのディレクションについて主に担当しました。とにかく自分のやりたいことを全部詰め込んだものでしたので、果たしてディレクターと呼んで良い立場だったかは疑問ですが(笑)。やりたいことって、僕の美学から出てきているもので、としくにさんが言っているようなディレクター論とはかけ離れているかもしれない。ただ、自分の中には「振り切らないのは良くない」という思いがあったので、とりあえずは好きなことを全部やり切った感じです。

ーーayafujiさん自身がkillremoteを愛用していたのもあり、先方のデザイナーからも信頼されていたことも大きいですよね。

ayafuji:それはすごく感じましたね。最初の段階でラフのワールドを出してから現在に至るまで、かなりスムーズでした。むしろ、ポップアップストアに僕らが作ったクリエイティブをフィードバックしてもらうような動きがありました。

ーーファッションショーの音楽についても伺えればと思いますが、どのような選曲を行ったのですか。

ayafuji:音楽はデザイナーさんの提案で、〈Maltine Records〉のuku kasaiさんという方にお願いしました。ラフの時点で「動画にするなら、音を入れたいね」と。XRライブのフォーマットを応用している取り組みだからこそ、「音を入れたら絶対にかっこよくなる」と僕自身も思いました。提案があった時点でそういう風に想像できたんです。さらに、音を入れることで撮影の方法もガラッと変わりました。これに関してはテクニカル担当の人にかなり無理を言って変えてもらったんです。具体的には、モデルさんがターンテーブルに乗っかって、ぐるっと1周するのを淡々と撮影する方針だったのが、音楽を入れるならステディカムで撮らないとグルーヴ感が出ないぞ、と思ったので、テクニカル担当の人に無理を言って急遽変更してもらいました。その甲斐あって、より普段のXRライブのような構成で、かつそこに自然と音が乗る演出が可能になったんです。

ーーkillremoteのファッションショーを手がけてみた感想を教えてください。

ayafuji:今回やってみて「バーチャルファッションショーのようなフォーマットがもっとあればいいな」と思いました。ただ、バーチャルでやると、それ自体が思想的というか、バーチャルでやることに思想が付随してくるので、その展示がファッションブランドのコンセプトと合致しているか意識せざるを得なくなる。そこの折り合いの付け方を考えることで、バーチャル空間でファッションショーをやる意義を見出せるのではと思っています。

表現のひとつとしてではなく、フォーマットのひとつとして発展していけば嬉しいですよね。僕自身も関心を寄せていますし、今後もやっていきたいフォーマットだと捉えています。

ーー今回のファッションショーは、バーチャル空間の可能性を掲示できたとてもいい事例だと感じました。huezとしても、また新しいクリエイティブの一端を生み出せたのではと思っています。最後に今後の展望についてお聞かせください。

ayafuji:XRというフォーマットはライブ以外にも活用できると常々思うところがありました。今回のファッションショーはそれを具体化できたし、なおかつ「被写体がここまできれいに撮れるんだよ」ということも提示できた。huezとして大きな収穫になったのは、ファッションアイテムのプロジェクト自体とそのコーディネートをクオリティ高く出す方法やその技術をモノにできたことと、美術的なディレクションを手がけられたこと。この知見を僕らの作品や他の案件などに還元していきたいと思っています。

としくに:ファッションなど、エンタメ以外のジャンルにXR技術を取り入れることは、演出をする上でも面白いなと思いますね。今後、huezとしても作品制作をしていく予定で、今回のバーチャルファッションショーの取り組みはとても知見になったと考えています。もちろん、仕事の方も同じように考えていて、たとえばXRを使って脱出ゲームをやったら面白いなと。huezはいろんなジャンルを専門とするクリエイターが在籍しているので、比較的どのジャンルでもやろうと思えば入っていけそうですね。やったことのないジャンルに着手することは大変なことでもありますが、うまい具合に連動していけば、もっとXRやバーチャル空間の可能性を広げられると考えています。

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