VTuber史上最速の登録者100万人突破。壱百満天原サロメの“快進撃”はなぜ生まれた?
住民票・履歴書・胃カメラ画像まで見せた衝撃のデビュー配信から、瞬く間に人気と注目度を集め、YouTubeチャンネル登録数は驚異的な伸びを記録。デビューからわずか17日足らずとなる6月7日にYouTubeチャンネル登録者数100万人を突破した。
今回はバーチャルタレント連載特別番外編として、そんな破竹の勢いでシンデレラロードを爆走する「壱百満天原サロメ」について記していこうと思う。
昨年7月末から、筆者はにじさんじに所属するバーチャルタレントに焦点を当てた連載を執筆してきた。本連載以外でもにじさんじを中心として、数多くのバーチャルタレントやVTuberについて執筆をしてきたが、壱百満天原サロメの勢いはバーチャルタレント(VTuber)のヒストリーを見ても類を見ないレベルの快進撃といえよう。
本稿を執筆している6月9日午後時点で、壱百満天原サロメはデビュー後から15個の動画アーカイブとショート動画をアップしている。そのどれもが100万回再生前後かそれ以上されており、にじさんじという知名度のあるバーチャルタレント事務所からデビュー直後とはいえ、ここまで再生数が伸びているのは破格であろう。
シーンを飛び越え、YouTuberやTikTokerといった動画投稿者・ストリーマーといった界隈を見渡しても、初速でここまで大きなバズを引き起こしたケースは少ない。
なにより、すでに知名度のある芸能人などがYouTubeチャンネルを開設したのではなく、ほんの数か月前までは「お嬢様を目指す一般人」だった彼女が、これほどの注目を集めることに成功したのだ。その成り行きは、間違いなくドラマティックだといえる。
彼女の配信には、どんなマジックが隠されているのだろうか? 本来であればこういった問いは、これまでの連載通り「長年にわたって活動してきた」方に向けられるものなのだが……、今回は例外的に、壱百満天原サロメの魅力・骨子についてつまびらかにしよう。
まず、配信が約1時間のなかでしっかりと収められていること。これが壱百満天原サロメの配信にとって重要な点になる。
近年のバーチャルタレントシーンでは、近しいシーンであるゲーム配信者やストリーマーらの影響を大きくうけ、3~4時間をゆうに超えるような長時間のゲームプレイを配信しつづけるスタイルが徐々に広まっている。
ロングタイムの配信は視聴者と長く触れ合うことができ、ゲームプレイを配信内で見せることが可能であり、そのなかでスーパーチャットやビッツを通して金銭的を得ることもできる。反対に、配信そのものに緊張感が欠けてしまうこと、初見のユーザーが入りにくいこと、不必要な発言や問題あるゲームプレイなどで炎上する危険が高まること、何よりタレント本人の心体に大きく疲労がたまってしまうなど、さまざまなリスクが付きまとうことになる。
1~2時間ほどのショートタイムの配信であればそういったリスクはかなり軽減されるが、短い時間内でどんな配信を見せられるか? という問題と直面することになる。
壱百満天原サロメはその点を、まさに身体ひとつ(フィジカル)で一点突破(ゴリ押し)しているように映る。ショートタイムな配信ゆえに体力や声の消耗に糸目をつけることなく、大いにハシャぎ、驚き、笑わせようとエンターテイメントに全力を注ぐ。
もっとも、デビューしてすぐの彼女にとっては「ペース配分」という感覚が薄いともいえ、それがゆえに全身全霊をこめて配信に向かっているといえよう。
いずれにせよ、彼女は1時間ほどの配信の中で、自身のパーソナリティをフルに活かした配信を届けてくれる。この1時間というタイム感覚も、テレビ番組などを通じて体感として分かりやすく、彼女を見に来た新しいリスナーたちにとって親しみやすいところであろう。
デビューしたての彼女やリスナーからすれば、まさに程よくいい塩梅に整えられたステージのうえで、彼女はフルパワーでリスナーを喜ばせている。「もう一度見てみよう」と思える動画へとアーカイブ化され、一目見ようと配信をのぞきに来たリスナーの脳裏に、鮮明な印象を残すことにも成功している。