夜明け近づく「TRPG×VR」の融合 『Xpraize』が示す新たな可能性
『Xpraize』が実現したTRPGとVRの融合。その可能性は?
TRPGの魅力は、参加者の想像力のかぎりに広がる自由な世界にある。ゲームマスターは、達成すべき目標や、過程にあるイベントを思いのままデザインでき、プレイヤーは、レギュレーション・ゲームマナーの許す範囲で、あらゆるアクションを試すことができる。あらかじめ用意されたレールに沿って話が進む一般的なコンピューターRPGとは異なり、映像・音の特別な演出はないが、その分、想像力という無限の可能性の下で遊べる点が、同ジャンルが支持を集めてきた所以であると言えるだろう。あえて言葉にするのであれば、「用意された演出」ではなく、「想像力とコミュニケーション」にパラメータを振り切っているのがTRPGであり、「制作者」ではなく、「参加者」に面白さが委ねられているのがTRPGだ。プレイを通じ、より良い体験を得るためには、パブリックの部分ではなく、プライベートの部分を充実させなければならない。
この観点に立ったとき、TRPGのデジタル化は逆進的だ。オンラインを介することで、物理的な場所に縛られずプレイできるメリットがある反面、多くの場合、参加者間で共有する環境はボイスチャットのみと限定されている。プライベートの部分の充実が質の高い体験に必須であるにもかかわらず、便利さを優先することで、一部の魅力が失われてしまっている実態がある。
『Xpraize』が実現したTRPGとVRの融合は、こうした課題を解決するものだ。デジタル特有のメリットは活かしながら、VRの活用によって、まるでその場を共有しているかのようなゲームプレイを演出する。これまで声だけだったコミュニケーションには、身振り手振りといった体を動かすものが加わるため、参加者はよりアナログに近い体験を受け取ることも可能だ。シナリオに忠実なアバターをゲーム内のキャラクターに設定すれば、アナログになかった映像的演出も享受できる。同ジャンルはVRとの融合によって、新たな局面を迎えている。
もちろんこれまでのデジタルTRPGでも、ウェブカメラなどを利用すれば、擬似的な場の共有が可能だったかもしれない。しかし、バーチャルであるがゆえのプライバシーへの意識などから、自身の映像の共有をNGとしていたプレイヤーも多くいたはずだ。こうした層もゲーム内アバターへの自身の投影なら抵抗なく取り組める可能性がある。リアルを共有していない、かつ顔が見えていないからこそ、遠慮のないロールプレイが可能となる面もあるだろう。
実際にVRを活用したSNSプラットフォーム・VRChat内には、同技術との親和性に着目し、新しい形でTRPGを楽しもうとするコミュニティがある。界隈では、すでにスタンダードとなり得るソフトウェアが待たれている現状だ。
『Xpraize』は、TRPG×VRの分野の旗手となれるか。今後の動向を注視したい。