植松伸夫の登場に『FF14』光の戦士たちも歓喜 THE PRIMALSがゲームの世界とリアルを音楽で繋いだ日

 この日の目玉となったのは、『FINAL FANTASY』シリーズの音楽の生みの親である、植松伸夫の登場だ。ステージ中央上段に1台のシンセサイザーが用意され、黒いフードを頭にかぶって登場すると、どこかレトロでスペーシーな音色が会場に充満した。演奏したのは、『FF3』の「悠久の風」、『FF1』の「メイン・テーマ 〜マトーヤの洞窟メドレー」、『FF5』の「ビッグブリッヂの死闘」という3曲。昔の『FF』をプレイしたことがない世代でも、どこか懐かしくも聴き覚えのあるメロディばかり。それもそのはずで、実は『FF14』にも、植松が作ったメロディが随所に散りばめられているとのこと。シンセサイザーの不思議な音色が新鮮に耳へと届き、何とも言えない懐かしさが胸を揺さぶった。

 「なんと植松伸夫さんが来てくださいました」と、誇らしげに師匠を紹介した祖堅。「若いころはお金がなくて、よく植松さんにたかってました(笑)」と言う祖堅に「たかられてました。当時は会社の近くの店に行くと、必ず誰か知り合いがいてね(笑)」と、それもまた思い出といった様子の植松。今回演奏した3曲は、実は植松のYouTubeチャンネルに上がっているとのこと。以前は、自分が昔作った曲を聴き返すことはなかったそうだが、「作った曲はやっぱり自分の子どもだし、いまならどうやったら良く聴かせられるか、データを切り貼りして作ったりして、ほんの遊びだったの」と植松。また、「THE PRIMALSはエンタメが徹底していてすごい。これはスクウェア時代にはできなかったこと。ゲーム音楽も育ったなと感じている」とコメント。その言葉を恐縮したような様子で聞いた祖堅は「いえ、植松さんのようなレジェンドがいるから、僕らはここに立てているんです」とコメント。ゲームや音楽だけでなく、思いも受け継がれた『FF』シリーズ。ゲームを越えた、文化としての懐の深さを感じた瞬間だった。

 ライブ後半は、「貪欲」などファンから募集したプレイ動画の映像に合わせて演奏した他、「知恵の巻き貝 〜オールド・シャーレアン:夜〜」は、アコースティックバージョンで披露。光の戦士たちの技に見惚れ、THE PRIMALSの演奏に聴き惚れた。そして終盤は、汗がほとばしるような熱く激しい演奏を次々と繰り出す。「フロントの人は、いろんなデバフ食らうから気をつけて!」と祖堅。「ロングフォール 異界遺構 〜シルクス・ツイニング〜」は、黒のローブをまとったダンサーが踊ってライブを盛り上げた他、「此処に獅子あり 〜万魔殿パンデモニウム:辺獄編〜」では、ステージには炎が吹き出す演出。アンコールの「メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編」では、祖堅がトランペットを吹き鳴らし、最後にドーンと爆発音が鳴り響いた。

 「次、声出せる時、またやろうぜ」と、祖堅。「帰ったら今日楽しかった人は、『FF14』を真剣にやってた人だ!」。ゲームの世界とリアルを音楽で繋ぐ。『FF14』のエンドレスな魅力の根源を観た。

『THE PRIMALS – Beyond the Shadow』
『Modulation - FINAL FANTASY Arrangement Album』

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