『FF10』に吹く、3つの“予期せぬ追い風”。再評価の号砲となるか?

『FF10』に吹く“予期せぬ追い風”

 名作に数えられる“あのRPGタイトル”が、思わぬところで話題を呼んでいる。

 そのタイトルとは、『FINAL FANTASY X』である。

 2001年に発売されて以降、年齢・性別を問わず多くのファンを獲得してきた同タイトル。話題のトピックがIP(※)に与える影響を考える。

※Intellectual Property の略語。キャラクターやシナリオ、音楽などを含む作品的な知的財産を指す。

2000年代初頭に生まれた、新たなRPGの金字塔『FINAL FANTASY X』

PS4版 ファイナルファンタジーX/X-2 HD リマスター 公式トレーラー「FFX/X-2とは」篇

 『FINAL FANTASY X』(以下、『FF10』)は、スクウェア・エニックス開発の人気RPG『ファイナルファンタジー』シリーズのナンバリング10作目。2001年に発売され、20年以上が経った現在もなお、多くのファンに愛され続けている傑作だ。

 主人公・ティーダは、突如街に襲来したアクシデントをきっかけに、未知の異世界「スピラ」へと飛ばされる。スピラでは、「シン」と呼ばれる怪物がたびたび街を襲い、人々はその災難に怯えながら暮らしていた。人々が言うところによると、シンを倒せるのは選ばれし召喚士だけなのだという。ティーダはシンを倒すため、召喚士・ユウナや、その仲間たちとともに冒険へと旅立つ。

 『FF10』は、過去の作品らしくない主人公のキャラクターデザイン、ゲームシステムなどから、シリーズの王道とは一線を画するタイトルでありながら、シナリオ・音楽の秀逸さによって圧倒的な支持を獲得した。初めてPlayStation2で発売された待望のナンバリングであり、場合によっては、35年続くシリーズの代表作にも挙げられるタイトルだ。

 2013年にはPlayStation3、PlayStation Vita、2015年にはPlayStation4、2016年にはPC(Windows)、さらに2019年には、Nintendo Switch、Xbox OneでHDリマスター版もリリースされている。全世界での総出荷本数は850万本超え(2019年末時点、オリジナル版の数字)。現在では『FF』の代名詞ともなっている「頭身の高いキャラクターデザイン」「実写さながらの映像美」などの要素は、源流をたどれば、同タイトルへと行き着く。シリーズにとって分岐点とも言える成功作品が『FF10』である。

仲間キャラクターのひとり・ワッカがネットミームに

 『FF10』を巡る予期せぬトピック。ひとつは、主要関連人物のネットミーム化だ。同タイトルに登場する仲間キャラクターのひとり・ワッカが、動画サービスに投稿された二次創作をきっかけに一部でトレンドとなり、その存在、発言などが注目を浴びている。

 5月7日に投稿された話題の動画は、1か月近くが経過した現在、ニコニコ動画で約260万再生、YouTubeで約210万再生となっている。軽快なリズム、キャッチーなメロディとともに『FF10』やワッカ個人の“あるある”を盛り込んだ内容が、同タイトルをよく知る視聴者に受け、広く拡散されたようだ。現在では、独特のクセを持つ彼の口調をモチーフに、「ワッカ構文」と呼ばれる語り口がアンダーグラウンドで流行しつつある。

 詳細については、人により不快感を覚える可能性、二次創作においてグレーな著作権問題などをはらむため、割愛する。気になる方は、ここに記載したキーワードを頼りに自己責任で検索してほしい。

 とはいえ、なかにはこの動画を観たことがきっかけで『FF10』を知り、作品自体に興味を持ったというフリークもいるだろう。IPにとっては、(かなり限定的ではあるが)必ずしもマイナスな影響ばかりではないと言えそうだ。

世界的スペースオペラの新作小説に、『FF10』の架空のスポーツが登場

 2つ目のトピックは、『スター・ウォーズ』シリーズの小説作品『Brotherfood』に、『FF10』の世界に存在する架空のスポーツ「ブリッツボール(※)」が登場したことについてだ。

 『スター・ウォーズ』シリーズといえば、誰もがその名前くらいは知っているであろうスペースオペラの超有名作品。これまで原点である映画を皮切りに、小説やゲーム、ドラマ、アニメと、幅広いジャンルでメディアミックスが展開され、『FF10』以上にコアなファンを獲得してきた。『Brotherfood』は、2022年5月10日にアメリカで出版されたシリーズの新作小説で、そこには、クローン大戦期におけるアナキン・スカイウォーカーとオビ=ワン・ケノービの冒険が描かれている。

 作者のMike Chen氏によると、登場したスポーツは「ブリッツボールにインスパイアされたもの」ではなく、「ブリッツボールそのもの」なのだという。NHL(北アメリカのプロホッケーリーグ)にルーツを持つ経歴から彼自身が同競技をこよなく愛しており、『FF10』のプレイ時には、多くの時間をブリッツボールに割いてきたと、Twitterで言及している。

※ブリッツボールとは、5対5でおこなわれる水球のようなスポーツ。主人公のティーダ、先述のワッカは、同競技のプレイヤーでもある。

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