『Weekly Virtual News』(2022年4月25日号)

企業、バーチャルアーティスト、YouTuber、NFT――問題解決に向け各自が手探りで進む“新しい領域”

 NFTの方面でもひとつ興味深い事例が生まれた。きっかけは漫画『左ききのエレン』に登場するストリートアートの「NFTアートオークション」だった。その販促のために作者が描いた漫画が、NFTの特性として「複製不可能になる」「唯一性を証明する」と伝えたことが、誇大な表現であるとして問題であると指摘されたのだ。

 指摘によって一度内容が修正されたものの、それでも正確性が少し欠けていた。そこで、バーチャル美少女ねむが監修として参加し、先日「誤りのない」内容となった再修正版が公開された(※2)。NFT方面でありがちな「誤解含みの喧伝」が、適切なプロセスを経てあるべき方向へ直された、貴重なケースとしてお伝えしたい。とはいえ、この問題点をNFT業界内部で対処しきれなかった点は、業界の明確な課題だろう。

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 そんなバーチャル美少女ねむは、4月22日実施の著書出版イベントで「寝癖」をつけて出席した。当人の意図したものではない。イベント開催日の4月22日、「VRChat」に新機能「Avatar Dynamics」が正式リリースされたのである。

Avatar Dynamics Open Beta Live Now!

 揺れものの表現コンポーネントが、「VRChat」独自の「PhysBones」に置き換わったことで、これまでQuestユーザーからは見ることができなかった揺れものを見ることが可能となり、パフォーマンスも従来から大幅に向上。さらに、自分やほかのユーザーが揺れものに触れられるようになり、より一段深いコミュニケーションや表現の創出が期待される。しかし、アバターによっては自動変換によって意図しない挙動に化け、「寝癖」などの発生につながってしまう……ということである。

 アップデートを経て想定外の挙動をする自分のアバターをなんとかするため、あるいは新たな表現を実現するため、一部の「VRChat」ユーザーたちは金曜日から新仕様と格闘している。プラットフォームに振り回されつつも、手探りで調整を続けるユーザーの姿は、コミュニティの大きな特徴だろう。とはいえ、新しいことに挑む際には、なにごとも手探りの期間が生まれるものだ。それは上記で取り上げたトピックたちにも、同じことが言えるだろう。

※1 http://meme-x.jp/2022/04/sle-final/
※2 https://note.com/nemchan_nel/n/nb52c49e60920

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