PERIMETRON・西岡将太郎のプロデューサーとしての審美眼 制約の中で表現を尖らせることができる理由

PERIMETRON・西岡将太郎の審美眼

実際に福井へ出向き、1年がかりで取り組んだ「FUKUI TRAD」

 PERIMETRONで担当した仕事のなかで、一番印象に残っているものは何か聞いたところ、「福井県の伝統工芸・魅力発信のプロジェクト『FUKUI TRAD』」の名を挙げた。

 「まさか1年間という、長い期間にわたるプロジェクトをやるとは思わなかった」と吐露する西岡は、FUKUI TRADの案件を通して感じたことをこう話す。

 「地方創生の文脈で携わった仕事でしたが、実際に福井県へ足を運び、伝統工芸品を作る生産者の方と会っていきながら関係性を構築するところから始めました。そのなかで、若狭塗(わかさぬり)を1つ作るのに1年半かかったり、越前箪笥(えちぜんたんす)は1つ100万円もしたり、後継者不足に悩まされていたり……。

 さまざまな課題があることがわかり、そこから解決の糸口を探していき、最終的には福井の伝統工芸品を実際に展示するだけでなく、手触り感を味わえるポップアップレストラン『圓(えん)』へと昇華させました。本当にいいものを作っているからこそ、見るだけで終わらせず、食と合わせたときに伝統工芸品の匠の技が光ると思ったんです。やはり、実際に現地へ出向いて本物を知ることは大事なんだなと実感しました」

ASILISの活動はライフスタイルの表現だからこそ、“遊び”を入れられる

 そんな西岡は、2020年1月にシンガーソングライター・俳優のHIMIとともに、自身のクリエイティブレーベル「ASILIS」を立ち上げた。

 HIMIの楽曲プロデュースやMVの制作やアパレル販売など、PERIMETRONの“顔”とは違う側面を反映させ、新たな創作活動に励んでいる。

HIMI - What if (Music Video)

 「ライフワークとして取り組んでいるからこそ、クライアントワークではできないことにチャレンジできる」と話す西岡はASILISにかける思いについて次のように語った。

 「商業的なペースに乗って制作物をリリースするのではなく、能動的にやりたいこと出来たものをリリースしていくので、自分たちが納得するクリエイティブのみアウトプットできるんです。それら全てに“遊び心”や”哲学”を入れることができるので徹底的に自分たちのスタイルを表現できるんです。自分たちで稼いだお金を、またASILISの活動費に回し、循環させていくことを主眼に置いています。クライアントワークでは出せない味というか、自分たちのフィルターを通し、感じたままに表現していくことが楽しいですし、今後も精力的に活動していきたいと考えています」

 クライアントワークのPERIMETRON、そしてライフスタイルのASILISという両軸の活動に身を置く西岡は、これからもプロデューサーとしての審美眼を生かし、人を魅了するクリエイティブを生み出すことだろう。

 最後に今後の展望について話を聞いた。

 「PERIMETRONは、ソフトウェアに長けていたりリアルな表現に強かったりと、メンバーによって得意なアウトプットの仕方が異なっています。だからこそ、お互いが独立している感覚というか、個々の持ち味を潰さずにリスペクトができていて、いい意味で統制がとれていると思うんです。こうした個の強みを生かしながら、今後も誰もやったことのないような面白いクリエイティブを作っていきたいと考えています。

 文化的背景を抑えつつ、海外の案件もやってみたいですし、地方創生に関わる仕事もやっていきたいと考えています。加えて、デジタル上にアーカイブを残すことに非常に興味があるので、VRやARなどの最先端技術を取り入れた表現にも挑戦したいですね。PERIMETRONはいろんなクリエイターが混ざっているチームなので、国内外問わずものづくりに携わるクリエイターとコラボし、PERIMETRONにしか生み出せないものを追求していきたいです」

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