流行するデジタルカードゲームの魅力と課題 手軽に始められる一方で”ガチ勢”優遇の傾向強し?

 TCGの面白さは、ゲームプレイだけでなく「人との関わり」にも見出すことができる。互いにコミュニケーションを取りながらゲームを進行することはもちろん、大会などに参加すれば初対面の相手と挨拶を交わし、対戦後には感想を語り合うこともよくある。そこで意気投合して友人になることも珍しくない。筆者にもTCGがきっかけで仲良くなった友人がおり、十年以上の付き合いになっている。人と対面して遊ぶ、アナログTCGだからこそ生まれる交流だ。

 デジタルTCGでは、ゲームの進行はシステムが自動で行い、チャット機能は定型文などの簡易的なものに制限されていることがほとんどだ。暴言などの嫌がらせをする悪質なプレイヤーへのリスクも考えれば、そうした仕様になるのは仕方のないことだが、人との関わりがないことは残念だ。

 また、ほとんどのプレイヤーが「勝つこと」のみに重きを置いたプレイスタイルになりがちな点も気になった。TCGでは、負けても人との会話などを含めてゲームを楽しむことができるが、DCGにおいてゲームプレイの目的は「勝つこと」に集約されがちで、その結果、負ければ「つまらない」という感想だけが残るのだ。本来TCGの面白さとは「勝つこと」だけではないはずだ。

 たとえば、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストはマジックのカードをデザインする際に、3種類のプレイヤー像を想定する。

・ゲームを何より楽しむことが目的の「Timmy(ティミー)」
・オリジナルのデッキやコンボを考えるのが好きな「Johnny(ジョニー)」
・競技志向が高く、ゲームの上達に重きを置く「Spike(スパイク)」

 の3種だ。メーカーはさまざまなプレイスタイルを想定しながらゲームをデザインをしており、「勝つためのカード」だけを作っているわけではないのだ。開発されるカードのなかには、物語の雰囲気に重きを置いたもの、創造意欲が刺激される面白い効果を持つものなど、ティミーやジョニーに向けたカードもたくさん存在する。しかし、現状のDCGのシステムはどちらかといえばスパイク向けの作りになっていて、ユニークなデザインのカードたちが活躍する機会は少ない。

 勝ちを優先するのであれば、自分で考えたデッキや、好きなカードを使うよりも、ネットで検索した勝率の高いデッキをコピーして使うのが、ゲームを楽しむコツになる。ティミーやジョニーが好むようなラフなデッキではゲームを楽しみづらいというのは、DCGの残念な点だろう。

「最強デッキを見つけよう」という文言ががまっさきに目に入る、『MTG Arena』の公式デッキ検索WEBサイト。

 とはいえ、前述の通りDCGにはたくさんの魅力がある。初期投資無しで始められ、一人でも遊べるのは特に大きな利点だろう。その戦略性や自由度の高いゲームに触れてみてほしい。そしてもし興味があったらTCGへのデビューも検討してみてはどうだろうか。自身に合ったスタイルを見つけてほしい。

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