韓国警察の腐敗と“無能さ”描いた『レインコートキラー』 韓国コンテンツはドラマだけでなくドキュメンタリーも強い
昨今のエンターテイメント業界における韓国の活躍が目覚ましい。ストリーミングは韓国のコンテンツが目白押しだし、Netflixが韓国作品に520億円の大規模投資をするというニュースは大きな話題となった。
ドラマティックで展開が早いストーリーと、高い演技力を誇る俳優たち、激しいアクションとくれば、ヒットにつながるのも納得だ。急成長している韓国コンテンツは、エンタメ界の黒船といっても過言ではないのかもしれない。
そんな韓国は、ドキュメンタリーもイケる。今日は、韓国史に残る連続殺人事件を取り上げた『レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件』について書いていこう。
韓国警察の在り方を変えた
ソウル20人連続殺人事件はユ・ヨンチョルが2003年から2004年にかけて起こした殺人事件だ。当時の韓国は経済的にも混乱の最中にあっただけでなく、警察は汚職だらけでまともに機能していなかった。当時の捜査官のひとりが「申し訳ないことですが警察のレベルがそれほど低かった」と語ったほどだ。
しかも、殺人のほとんどは怨恨が原因だったために、シリアルキラーの出現に捜査は難航。犯人を捕まえるにも、まずは警察の体制を正すことから始める必要があった。
『レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件』は、当時の韓国警察の体制と、捜査をする上でどう変化したいったのか、そして犯人逮捕後を追っている。実際に捜査に関わった警察官がインタビューに答えるのだが、これがかなりのダメ刑事っぷりで驚いてしまう。
たとえば、犯人を確保したはいいが、取り調べをしていた警官が席を外した隙に、取調室から逃げられてしまう。鍵をかけ忘れたのだ。そして、その失態を隠すために、検察の元にいき、検事に隠蔽工作するように頼む。保身と隠蔽工作がまかり通っていたのか、キャリア10年の検事は比較的すんなりと応じる。そして、「捕まえられなかったら警察官も私も公文書偽造の罪に問われる可能性があります」というのだ。すでに公文書偽造は成立しているのではないのだろうか。
見張り捜査にしても、車の中で夜通し見張ったことや、バックミラーで常に人の行き来を確認していたことを、さもすごいことをやったかのような口振りで話す。損傷が激しい遺体の指から指紋を採取する時も、最後まで粘ったのは女性の科学捜査チーム長だけで、ほか他は早々に諦めようとしたという。こういったことを、仰々しく語ることで、それまでいかに韓国警察がまともに捜査をしてこなかったのかが露呈する。面白いくらいに逆効果なのだ。