英国人YouTuberクリス・ブロードが語る“夢”を叶えた瞬間の景色 渡辺謙と「コーヒーを飲んだ」感想は?

ーーそういえば、『世界的YouTuberになった東北在住の英国人』のあとがきに、クリスさんが敬愛する俳優の渡辺謙さんとコーヒーを飲んだと書かれていましたね。

クリス:そうなんです。渡辺謙さんとは4〜5日一緒に過ごしました。10月と11月の2回に分けて撮影したのです。会う前日は緊張して眠れませんでした。大イベントの前はいつだって眠れないのですが、私は渡辺謙さんの20年来のファンなので、その時の睡眠時間は1〜2時間くらいだったと記憶しています。だからインタビュー当日のコンディションは最悪でしたね。

 ボロボロの私は、気仙沼にある渡辺謙さんのカフェの一角に座り彼が到着するのを待っていました。すると男性が自分に向かって歩いてくるのです。マスクをしていたからわからなかったのですが、その人が他でもない渡辺謙さんでした。

 最初は緊張してしまって、とにかく悪い印象を与えないようにと言葉を選びました。その日はすぐに撮影に入ったわけではなく、ありきたりな会話を交わすことでお互いを知ろうとしました。気仙沼までの交通手段とか、新幹線の中ではどうやって過ごしているのかとか、彼のカフェで提供しているピザや、彼が好きな長野のコーヒーのこととかを話しました。

 でも、当たり障りのない会話しかできず、きっと退屈な人間だと思われた事でしょう。面白いことや気の利いたセリフを言うよりも、とにかく失礼に当たらないように言葉選びを重視してしまったんです。

 しかし、そういった会話をしながら徐々に打ち解けることができました。2日目には自分らしさを取り戻して会話ができていた思います。

ーー憧れのスターと話すと、どんな心境になるのですか。

クリス:まず、初日はあらかじめ用意していた質問に答えてもらうのに必死でした。でも、我に返るととても変な気持ちになったのです。

 だって、映画『ラスト サムライ』(2003年)のときから、20年も憧れてきた人が目の前にいるんですよ。眠かったこともあって、これは夢なんだと思いました。『GODZILLA ゴジラ』(2014年)や『硫黄島からの手紙』(2006年)、『インセプション』(2010年)に出ていた人が自分とコーヒーを飲んでいるなんてあり得ないと思うのは自然なことでしょう。

 しかし、会話を交わすうちに「大スターと言っても自分と同じように人間なんだな」と見方が変わってきました。素晴らしい俳優で、その道のトップですが、私と同じ人間なのだと。

 彼とのインタビューで後悔しているのは、日本語でコミュニケーションが取れなかったことです。もうすこし日本語を勉強していれば、日本語で会話を楽しめたのに。

ーークリスさんはフィルムを作っていますが、いつの日か渡辺謙さんと一緒にお仕事をする日がくるのでしょうか。

クリス:いつの日か一緒にお仕事ができたらいいですね。しかし、当然ですが今はそのタイミングではありません。

 私がもっと大物になって、フィルムが評価されて、オファーを出すに相応しい立場になったら、是非一緒に何かを作りたいです。なにせ、世界の渡辺謙さんですから、私が釣り合いの取れる立場にならなければ。

ーーなるほど。では最後に、改めて今後の執筆活動について質問させてください。先ほど、視聴者から英語版の本を出してほしいという要望が寄せられたと伺いましたが、英語での執筆の予定は? 

クリス:あります。今年の8月で活動を始めてから10年という節目を迎えますし、今年は英語版の本も書きたいという意欲が湧いています。

 来日数年程度ならこんな気持ちにはならなかったでしょう。たった数年住んだくらいで、異国文化を理解し、敬意を持って語ることはできません。しかし、10年なら伝えられることがあるはず。プレッシャーを感じますが、ファンの要望でもありますからね。

ーーどんな内容になりそうですか?

クリス:日本に来てからの3年間と、その後の活動について書くつもりです。YouTuberとしてのあれこれを深く掘り下げるのではなく、手探り状態でサバイブした山形での3年間を知りたいという声が多いのです。日本でどうやって友達を作ったのかとか、同僚とどうやって過ごしていたのかとかですかね。

 実はすでに某大手出版社と話を進めているんです。ミーティングの手応えはいいので、実現できたら良いな、と思っていますよ。

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