「VTuberは新鮮さが命」ファンとの関係性で創造されたキャラクターを守るにじさんじ・剣持刀也の流儀

 雑談配信の多さやトーク力、会話力の高さも彼の特徴だ。「マンガ好き」「映画好き」「ロリなキャラが好き」など、自身の趣味や嗜好性を口にしては話を広げ、さまざまな角度からおもしろおかしくトークしていく。

 その雑談力の高さはにじさんじのなかでも指折りであり、エピソードの流れや重要な部分を整理して分かりやすく届けたり、ボケ担当に偏り気味なにじさんじメンバーのなかでもツッコミ役・常識人側となってトークを盛り上げる。

 先にあげた「名前間違い」の影響でイジりやすいキャラとして受け取られ、リスナーからの強烈なツッコミやコメントが届き続けることになったこともあり、「それなら……」と話を脱線し、ふだんの常識人な振る舞いから一気に強気でトゲのある言葉遣いを次々と口に出し、剣持本人とリスナーらが身を削るように煽り合うことも多々ある。

 その際には剣持が勝者となって偉ぶってみたり、リスナーにボコボコに打ち負かされてメソメソとしてみたりと、見せてくれるさまざまな振る舞いに、彼のユーモアや対応力の高さを感じられる。

【Slither.io】開始5秒でリスナーに負かされる剣持刀也【にじさんじ / 公式切り抜き / VTuber 】 

 彼のスタンスがデビュー後大きく変わらなかったこと、先に述べたように雑談配信やリスナー参加型のゲーム配信が多かったことも合わさり、この悪ノリは彼のファンが多くなっていっても薄れることはなかった。

 剣持刀也とファンの強固な関係性は、そのまま「剣持刀也」というキャラクター性にも繋がっていった。そこから数々のネットミームやスラングが生み出され、そのいくつかはにじさんじ全体にも知られるようになった。その関係性の在り方は、にじさんじのなかでも異質な面白さを持っているといえよう。

ゲーム外でも視聴者と戦う剣持刀也【おえかきの森】【ゲーム実況】【にじさんじ / 公式切り抜き / VTuber】 

 これだけではなく、にじさんじの先輩である元一期生に限らず、さまざまなイベント・作品について、日常のささいなことを含めても「ぼくは〇〇だと思うんだよ」というような口調で彼なりの考え・態度をもって接しつづけている。気さくな性格でありながら、彼なりのアイディアとテンションをもったトーク力を存分に生かして、自分のカラーを押し出せる我の強さが滲み出ているのだ。

 デビュー時から配信は月に4~6回ほど、1週間に約1回ペースを崩すことなくすすめてきた。剣持刀也の姿をみていると、月ノ美兎からの影響はさることながら、「常にフレッシュな存在であろう」と心がけ、自身のブランディングや活動に至るまでをできるだけコントロールしようとしているのがよくわかる。例えば、にじさんじに所属するタレントならば年に一度発売するであろう誕生日グッズ・ボイス、ほぼ全員が発表している挨拶や目覚ましのにシチュエーションボイスなどについては、様々なボイスを含めてもごく少数しか販売していない。 悪ノリで生まれたミームやスラングはあくまでファンたちによるものと割り切り、SNSの更新も日にいちどしているかどうかで少なく、うまく距離感を取りながら活動を続けてきた。こういった活動ひとつひとつにすら、彼なりの流儀やプライドを感じさせてくれる。

 本来ならば2022年1月20日に開催予定だった『にじさんじ 4th Anniversary LIVE FANTASIA』に出演するはずだったが、出演者やスタッフが新型コロナウイルスに感染してしまったために中止となり、剣持本人も感染し、長らく配信もストップしてしまった。

 2月10日に約25日ぶりの配信をすると、同時視聴者数は約3万人前後を記録。復帰して早々にファンから届いた「謹慎解けた?」というメッセージからスタート、ファンとともに復活を祝う配信となった。

剣持の帰還 

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