iPhone13は「TikTokを撮るカメラ」として優秀? 動画クリエイター・あああつしと考える

「TikTokを撮るカメラ」としてのiPhone13

 今年リリースされたiPhone 13は、様々な機能のアップデートこそあるものの、やはりその特徴は大幅に進化したカメラといえる。本メディアをはじめ、各媒体でもiPhone 13のカメラ性能に関する記事は多く掲載されているが、いまの10〜20代が最もiPhoneのカメラを使用するのは、おそらくTikTokであるはずだ。

 しかし、TikTok目線からiPhone 13のカメラについて掘り下げた記事はない。ということで、今回は著書『スマートフォングラフィー』を発売したばかりである、TikTokでの写真・動画撮影に長けたクリエイター・あああつし氏をインタビュー。同氏のキャリアを改めて振り返りつつ、TikTokのカメラとしてみたiPhone 13について考えていった。(編集部)

TikTokに適しているのは「シネマティックモード」より「フォトグラフスタイル」?

――まずはTikTokを始めたタイミングやきっかけを教えてください。

あつし:本格的にアカウントを始動させたのは、2019年の頭です。最初は試しに2、3本くらいアップして「難しいな」と感じたのですが、状況が整ってきたこともあって、ドローンや一眼レフで撮った風景に音を合わせた動画を投稿することにしたら、一定数の反応があったので続けてみようと思いました。

 当時は銀行員として働いていて、休みの日の趣味としてカメラをやっていたんです。ただ、投稿してからフォロワーが増え始めたので、映像や写真といった趣味を仕事にしたいと思い、ベンチャーの映像制作会社で1年ほど働いたりもしました。

――当初は風景などをメインにアップしていましたが、停滞を感じてiPhoneのみの撮影に変えたんですか?

あつし:はい。1年間は試行錯誤しつつ、ジャンルややり方は変えずに続けていたんですが、周りを見渡すと同じ1年でも20、30万人のフォロワーを獲得している方が目について。自分はそのときはまだ4万人前後で、「もっと何かできるんじゃないか」と思った時に、みんなが親しみを持っているカメラは、一眼でもドローンでもなくてiPhoneなのかもしれない、と思ってiPhoneの撮影術を発信する方向にシフトしました。

――撮り方もだいぶ変えられましたよね。

あつし:これまでは完成形というか、料理で言うとできあがったものをお見せしてたんですが、レシピにあたる部分ーー作り方を動画にするという見せ方に変えたのが一番大きかったです。

――プロセスを見せる動画のインスピレーションの元になったものもありましたか?

あつし:動画ではないのですが、西野亮廣さんのオンラインサロンに入っていたときに、プロセスが大事だよねという話をされていて。それを自分に置き換えたときに、じゃあなにが見せれるかと考えたら、撮り方や編集の仕方だなと思って。いままで完成形だったものの途中の過程や裏側を見せるのが正解なんじゃないかなと。

――なるほど。TikTok全体の流れとしても、いわゆるスタディ系のコンテンツ、やり方を教えるだとか勉強を教える人が増えてきたというのも流れ的にはドンピシャだったと思います。そのあたりは意識していたのでしょうか?

あつし:手法を変えたタイミングでは、まだそんなにいなかった気がします。同じタイミングで「教える系のコンテンツが流行っているな」と途中で気付いて、「あ、このまま続ければ大丈夫そうだな」と確信に変わりました。

――iPhoneで撮るとなったとき、これまでの機材と撮り方も違うでしょうし、裏側を見せる前提でどういう撮り方をしようなど、発想の仕方が全然違いますよね。だからこそ行き詰まったこと、苦労したことはありますか。

あつし:元々iPhoneを駆使していたタイプではなかったので、いちから自分で勉強しました。あとはとにかく写真や動画を撮りまくりました。設定や撮り方についてはあらゆるものを試してみたり、一眼で撮れるものやドローンで撮れるものをいかにiPhoneで同じように撮るか、という点についても、徹底的に研究しました。

――あああつしさんの動画は大きく分けると「プロ機材で撮っているようなハイクオリティの写真をどうiPhoneで撮るか」「iPhoneでしか撮れない構図での写真や動画」の2種類があるということですね。後者について、手ごたえを掴んだ瞬間はありますか。

あつし:方向転換した一番最初の動画として、2020年1月にアップしたものです。結果的にはあれが一番バズったので、あそこまで見られていなければ、自分の自信にもならなかったでしょうし、まだまだ試行錯誤していたような気がします。

――構図を思いついて発信するにあたって、あああつしさんなりの思考ルーティーンみたいなものはあるのでしょうか。

あつし:まずは頭の中に撮りたい写真が必ずあります。プロが撮ったものでもドローンで撮ったものでも、あとは100万くらいの機材で撮ったものでもいいのですが、綺麗な写真をみたときに「これを撮りたい!」と思ったものを一旦頭の引き出しに入れておくんです。

 その後、ピッタリ合うシチュエーションになったときにそのアイデアを引っ張り出してきて、iPhoneだけでこれに近づけるにはどうしたらいいのかを考え、鏡や小道具など、物が必要であれば準備したうえで実際に撮影していきます。

ーー撮影の際に心がけていることは?

あつし:ほかの人が真似しやすい動画になることを意識しています。最近アップした動画は水中で撮るものなんですが、水中と地上を一枚に収める写真は前から撮りたかったんです。過去にも透明な容器にいれて撮ったりと、いろいろ試していたんですけど、結局パノラマ機能を使ったら撮ることができ、これなら再現性もあると思い、動画にしました。

@aaa_tsushi_

パノラマ撮影の裏技!こんな写真撮ってみたくてiPhoneで撮れるか試してみたらできた笑 ##あああつし ##福井県 ##かずら橋

♬ オリジナル楽曲 - あああつし

ーースマートフォンのみの撮影という縛りを設けたことによって動画もバズり、フォロワーも増えた半面、制約や壁にぶつかった瞬間はありましたか?

あつし:スマホに絞ることで、新たな機種が出て、その技術を使った撮影術をお伝えすることはできるんですが、途中でネタ切れになってしまうことが難点です。そこはOSを変えてみたり、写真と動画の両方にしてみたりと、バランスを考えながら工夫し続けています。

――先日登場したiPhone13は、カメラのアップデートという面でも大きな機種でした。撮影術を発信するクリエイターとして、率直にどういう感想を抱きましたか?

あつし:大きな売りである「シネマティックモード」は、個人的に好きではなくて。新しい機能だと「フォトグラフスタイル」のほうに可能性を感じています。大まかに紹介するとフィルター機能が進化したものという形になるのですが、明るさやトーンがフィルターごとに変えられるんです。撮影段階での色味の設定や撮り方が変わってくるので、自分にとっては大きな進化でした。

 ほかにも、基本的な性能として動画の自動調光や手ブレ補正は、iPhone 12 Pro Maxよりもしっかり良くなっていると思いますし、いくつかのAndroid端末を使って思うことでもあるのですが、iPhoneは0.5倍も1倍も3倍も全部4Kで撮れることも魅力です。意外と広角で4Kを撮れない機種もあったりするので。

――ありますね。わかります。

あつし:別に8Kは必要ないから、全部4Kや4K120fpsで撮れることのほうが魅力的なので、そちらの面での進化も期待したいです。

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