格差社会を生み出す? NFTゲームが抱える闇とは

 デジタルアート作品の高額取引で耳目を集めているNFTは、ゲームへの導入も試みられている。大手ゲームパブリッシャーUBISOFTもそのひとつだが、ユーザーからは手痛い反応が返ってきた。こうしたゲーム業界におけるNFT反発の背景には、NFTゲームが抱える闇が指摘できる。

売れたのは合計で18個

 US版Engadgetは21日、大手ゲームパブリッシャーUBISOFTが発表した「ゴーストリコン ブレイクポイント」PC版に導入したNFTアイテムシステムでNFTアイテムがほとんど売れていないことを報じた。その報道によると、今月8日に始まった同システムにおいて売れたNFTアイテムは21日時点でわずか18個であった。

 UBISOFTは以上のNFTアイテムシステム開始にあたり、3種類のNFTアイテムを無料で提供した。これらの限定アイテムを取得するには600時間以上のプレイ時間が必要など、一定の条件を満たす必要があった。しかし無料提供期間は既に終わり、現在は金銭を払って購入しなければならない。こうした状況にも関わらず、NFTアイテムはほとんど売れていないのだ。

 NFTアイテムが売れないことは、プレイヤーからNFTアイテムシステムが支持されていないことを意味している。もっとも、支持されない兆候は同システム発表直後からあった。ゲームメディア『PC Gamer』の9日付の記事によると、UBISOFTがゴーストリコンのNFTアイテムシステムを発表したトレーラー動画をYouTubeで公開したところ、高評価が1,000程度に対して低評価は31,000であったのだ(なお、低評価数はChromeの拡張機能により情報を取得した)。

中古ゲーム市場の復活?

 以上のゴーストリコンのNFTアイテム不評に見られるように、ゲーム業界にはNFTに対する根強い反発がある。こうしたゲーム業界におけるNFTの評価に関して、アメリカ大手メディアCNBCは20日に特集記事を公開した。この記事では、ゲーム業界人が語るNFTの賛否両論がまとめられている。

 Microsoft Xboxブランドを率いるPhil Spencer氏は、ゲームに「搾取的」と感じさせるものを持ち込もうとするNFTをめぐる動向に対して警告を発している。

 優れたゲームに賞を与えるThe Game Awardsでホスト役を務めるGeoff Keighley氏は、「私にとってゲームで気に入っているのは、ゲーム内の世界、ストーリー、体験です」とゲームの魅力を述べたうえで、「私が望んでいないのは、物事がトランザクションであると感じることです」とも語り、ゲームを取引の集積(つまりはトランザクション)に変え兼ねないNFTに対して暗に不快感を示した。

 一方で、近年注目のNFTゲーム「Axie Infinity」(同ゲームの詳細は後述)の開発陣に投資する投資家のRobby Yung氏は、NFTゲームのポテンシャルを高評価している。そのポテンシャルとは、中古ゲーム市場の復活である。かつてゲームがカートリッジでプレイされていた時代には、中古ゲーム屋を中心としたエコシステムが繁栄していた。ゲームのダウンロード販売が主流になって中古ゲーム市場は衰微したが、NFTゲームが台頭することで古くなったゲームやアイテムのデジタル情報をカートリッジのように取引できるようになる。その結果として、中古ゲーム関連のNFT市場の誕生が期待できるのだ。

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