社会は厳しい。それでもーー野村周平の「会社は学校じゃねぇんだよ」に込められた様々な想い

「会社は学校じゃねぇんだよ」に込められた様々な想い

 「正直、不安なことばかりだけど。でも、その先には必ず希望があるから」ーー。最終回の祐介(野村周平)の言葉に、本作が伝えたいメッセージが詰まっていたように感じる。12月9日に最終回を迎えたABEMAオリジナルドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ 新世代逆襲編』は、とにかく容赦がない作品だった。

 大きな夢を持つ若者に、世間は次々と試練を与えていく。床に落ちたパスタを食べさせたり、「イタい」と罵ったり。祐介は、何度もどん底まで突き落とされた。観ているこちらまで、目を覆いたくなるような困難の連続。それでも、彼は立ち上がった。だから、その先にある“希望”を見つけることができたのだ。事業が成功して、“成功者”と呼ばれるようになった祐介が、「最悪な出来事でも、すべて意味があった」と言ったとき。彼の成長を追ってきた筆者自身も、どこか救われたような気持ちになった。

 本作のタイトルにもある「会社は学校じゃねぇんだよ」は、作中のさまざまな場面で放たれた。前作の『会社は学校じゃねぇんだよ』の主人公・鉄平(三浦翔平)が大事にしてきたこの名言。第1話で、祐介はその鉄平に対して、「人のものを奪ったっていいんですよね? だって、会社は学校じゃねぇんだから」と言い放った。前作では、祐介の立場だった鉄平が、“言われる側”になっているのは感慨深い。

 同じ言葉なのに、さまざまな意味に取れるのが、「会社は学校じゃねぇんだよ」という台詞の面白さである。父の会社・鶴鞄が、経営の危機に直面した第2話。負け知らずの人生を歩んできた祐介は、人生初の挫折を経験した。100年以上続いてきた大切な会社を手放したくはない。それでも祐介は、会社を守るために鶴鞄を売却すると決めた。これまでの彼ならば、「自分が社長になって、鶴鞄を立て直す」と宣言したかもしれない。だが、そんな奇跡は起きないことを、祐介は知ってしまった。会社は、教師や保護者などたくさんの人に守られた学校とはちがう。待っていれば、誰かが奇跡を起こしてくれるわけではない。泣き叫びながら祐介が放った「会社は……会社は学校じゃないんですよ」には、そんな社会の厳しさが詰め込まれていた。

 そして、第3話。恋人・智美(藤井夏恋)との苦しい別れのシーンでも、この言葉は使われた。学生時代から交際していた2人は、誰もが認める理想のカップルだった。祐介が大きな夢を追いかける姿を、智美が優しく見守る。この関係性により2人の交際は順調であったが、智美がライバル会社・C-LIFEの社長に抜てきされたことで、歯車は狂い始める。祐介がどうしてもつかみたかった仕事を、ことごとく邪魔していくC-LIFE。それでも祐介は、「しょうがない。会社は学校じゃないんだから」と言って、怒ることはしなかった。“仲間の邪魔をしてはいけない”というルールは、会社という組織のなかでは通用しない。鉄平の、「社長というのは、自分の胸を刀で刻まなければならない時がある」との言葉を思い出す。会社は学校じゃない……からこそ、別れを選ばなければならなかった2人の恋の終わりは、なんとも切ないものだった。

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