『Arcane』の成功はNetflixにとって福音となるかーーIP活用の今後を占う

『Arcane』の成功はNetflixにとって福音となるかーーIP活用の今後を占う

動画配信サービスから総合エンタメ企業へ

 Netflixは多数のオリジナル作品を有しているが、現状ではそのIPを映像以外のジャンルに水平活用する機会に乏しい。それはおそらくNetflixも自覚している点で、2017年には『キングスマン』や『キックアス』の出版社であるミラーワールドを買収するなど数年前からIPの強化に乗り出している。日本アニメへの出資にも同様の意図があるだろう。

 今年、NetflixはECサイト「netflix.shop」をオープンした。関連グッズを売る窓口を作ったのは、グッズ収入を見込むということ以上にブランド力の強化という意味合いもあるのだろう。ディズニーやマーベルしかり、ワーナーしかり、日本の出版社しかり、強力なIPを中心にしたマーチャンダイジングはコンテンツビジネスの王道だ。

 現在、『カウボーイ・ビバップ』関連グッズの発売も始まり、『Yasuke』や『エデン』など日本アニメの関連グッズも展開している。商品一覧を見てみると、服やアクセサリーなどの身につけるタイプのグッズが圧倒的に多い。

 Netflixは、オンラインで映像作品を提供する企業であるがゆえに、同社のプレゼンスはオンライン上では大きいが、リアルな世界ではさほど大きくない。リアルな世界でNetflixの存在をアピールしようと思えば、広告を展開する必要があるが、自社関連コンテンツのグッズを身に着けた人が街中に増えれば、そのこと自体がブランド力の強化につながる。ディズニーやマーベルのブランドグッズを身に着けた人々を街中で見かける機会がとても多いのも、こうしたブランド戦略が有効であることの証明になるだろう。

 こうした戦略を成功させるためにも、強力なIPが必要になる。今後のNetflixはこうした水平展開しやすい企画に積極的に取り組んでいく可能性が高く、その意味で2021年のNetflixの動きは、今後を見据える上で重要なものばかりではないだろうか。映像作品を定額で提供するだけのシンプルな企業から、総合的なエンタメ企業へとステップアップする萌芽が見受けられた1年だった。

 元々、Netflixは「自社の競合は映像産業の会社だけではない」と明言してきた。エンタメ産業で人々の可処分所得を奪い合うあらゆるサービス、例えば『フォートナイト』のようなゲームやYouTubeなど、全てが競合であると主張していた。ゲームやグッズ以外にどこまで戦線を拡大するかはわからないが、柱となる映像とシナジーのある分野には、今後も積極的に事業を広げていくだろう。

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