Adoが選ぶ、2021年前後に見つけた「“次くる”ボカロPたち」と溢れるボカロ文化への愛
リアルサウンドテックでは、『The VOCALOID Collection』(以下、ボカコレ)特集として様々な記事を展開中だが、『The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~』にまつわる記事はこれで一旦ラストとなる。
最後を飾るのは、J-POPにおける2021年の顔の一人でもあり、ボーカロイドシーンに並々ならぬ愛情を持つシンガー・Ado。“歌ってみた”のシーンを出自に持ち、様々なところでニコニコ動画やボーカロイドシーンに対する愛を語っている彼女。今回は「Adoが選ぶ『2021年前後に見つけた“次くる“ボカロPたち』」をテーマにしたインタビューを実施。個性的な4人のボカロPと、その選出理由を語ってもらった。(編集部)
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Adoが「もっと注目されろ!」とずっと思っているボカロPとは
ーーさまざまなところでボカロ愛を存分に語っているAdoさんですが、そもそも普段は新たなボカロ曲をどのようにして探しているのでしょうか。
Ado:最近だと、YouTubeやTikTokのオススメ欄などから探される方なども多いと思うんですが、私はニコニコ動画で自分が好きでリピートしている楽曲と同じタグから掘るようにしてるんです。ジャンルやボーカロイドの名前などで探していくと、今までにない出会いがあったりするので、「なんてありがたいんだ」と思いながら新しい曲や作り手さんを探しています。あとはニコニコのランキングとか、Twitterで私がフォローしているボカロPさんのRTやいいねしているものがTLに出てきて、それをチェックすることも多いです。
ーーランキングといえば、『ボカコレ』のランキングが盛り上がっていますよね。今回の特集でもルーキーランキングについて話すボカロPさんが多いです。
Ado:そうですね。『ボカコレ』は才能の宝庫で、毎回楽しみながら新たな出会いを経験させてもらっています。
ーーそれらも踏まえて「2021年前後に見つけた“次くる“ボカロPたち」について聞いていきたいと思います。まずは一人目について。
Ado:まずは伊根さんですね。色んなところで名前を出してるんですが、過去の曲から新曲まで、とにかくずーっと聴いていて。「もっと注目されろ!」とずっと思っています。2020年冬の『ボカコレ』には、自分も「歌ってみた」で参加したんですが、その結果発表の生放送を見ているときに「踊ってみた」ランキングで、踊り手のぽるしさんが伊根さんの「ルーセ」を踊っていて。ぽるしさんのことは元々知っていたんですが「後ろで鳴っているこの曲はなんだ……?」と思い、作っている人を調べて、伊根さんに行き着きました。
ーー伊根さんの楽曲における魅力とは?
Ado:音がいわゆる“ボカロっぽい”んですよね。前奏で惹かれることが多いんですけど、音作りは「なんでそうなったの?」というコード進行や展開の仕方をしていて、何回も繰り返し聴きたくなってしまうのと、ボーカロイドにIAちゃんを使っているんですが、本当に伊根さんの世界観とIAちゃんの声が合っていて。
ーーわかります。退廃的な世界観とトリッキーな感じが、IAのポテンシャルを引き出している感じがしますよね。一番好きな伊根さんの楽曲はなんでしょう?
Ado:全部と言いたいところですが、あえて挙げるなら「メドレーライフ」ですね。サビの〈"愛してる"信仰を止められやしないんだな〉とか、どうやったらこんな素晴らしいものを思いつくんだろう、と感動しましたし、幾何学的・退廃的な要素だけではなく、少しの希望のようなエッセンスがあるのもこの曲を好きな理由なのかもしれません。
ーー伊根さんの楽曲のなかでも突出した抜けの良さ、みたいなのはたしかにありますね。二人目を挙げていただきたいのですが、どなたになりますか?
Ado:2021年というよりは少し前に見つけた方になるのですが、きさらさんという方です。名前を知ったのはたしか『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』を初音ミクが実況する動画がすごく面白かったんです。
ーープロセカの公募に落ちたことをネタにされている方ですね。
Ado:そうです(笑)。ただ面白いだけじゃなくて、『ボカコレ』の期間には「LIMITED QUEEN」という鳴花ヒメちゃんと鳴花ミコトちゃんの曲をアップしていたんですが、これがすごくいい曲で。リズミカルだけどダークファンタジーな感じが好きですし、ご自身で絵も書かれていて、それもまたお上手で。すごく多彩な方なんです。あと、楽曲が昔のボカロっぽい感じもするんですよね。2008年〜2009年っぽい空気感というか。それがまた良いんです。