“管理”か、それとも“監視”か? リモート管理ツールのメリットとデメリット

リモート管理ツールのメリット・デメリット

 リモートワークが広く浸透していく中、米国ではリモート社員の管理ツールが注目を集めている。生産性の向上やコミュニケーションの活性化などが期待される一方で、プライバシーの侵害や、雇用主から“監視”されている圧を感じるなどの問題点も見えてきた。

 米メディア『The Guardian』は、管理ツールの「Sneek」を実際に使用した経験のある新入社員の事例を取り上げている。

 大学を卒業したばかりだというデイビッド氏は、コロナによってオフィスが封鎖されたあとすぐ、上司から「Sneek」の導入を告げられたという。ツールは数分おきに、パソコンのカメラを介してデイビッド氏や同僚たちの写真を撮影し、チームの全員がアクセスできるデジタル会議室に掲載した。また同僚の画面枠をクリックすると、強制的にビデオ通話がスタートする仕様のようだ。メッセージツールのSlackと連携して、問題のある画像をチャンネルに投稿することもできる。

 デイビッド氏は監視の圧を感じ、3週間で会社を辞めたそうだ。「僕のリビングルームを配信するのはやめてほしい」としている。

 「Sneek」の共同創設者、デル・クリー氏は、「このツールは、オフィスを再現をすることを目的としている」と語った。「多くの人がこれをプライバシーの侵害だと感じるであろうことは、私たちも理解している。だがこのツールは、そういう人たちのためのものではない」とし、「一方で、良い友達のような関係で、仕事中により多くコミュニケーションをとりたいと考えているチームもたくさんある」と述べ、そのような人たちに使ってもらうことを意図しているとした。

  コロナ以前には存在感の薄かったリモート管理ツールだが、2020年3月以降大きな注目を集め、昨年4月にはGoogleでの関連単語の検索数が前年比で212%、今年の4月にはさらに243%も増加している。

 業界大手の「Activ Trak」は、昨年3月の1ヶ月間で、クライアント数が50社から800社に急増したようだ。その後も順調な伸びを見せ、今では約9000社に導入されている。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校の准教授、エリザベス・ライオンズ氏は、「私たちが行った調査によると、管理されていると知らされていない人に対して、管理されていることを知っている社員の方が生産性が高かった」と述べている。さらに「ツールによって、彼らの業務が会社にとって不可欠だと証明できることに満足している」とし、社員がツールを評価していると語った。

 ただ管理が威圧的になると、士気に影響が出ることも認めている。「他の研究では、労働者たちは『雇用者が自分の業務のすべてを監視するつもりなら、期待されている以上のことは何もしない』という姿勢だ」とライオンズ氏は語った。

 良い側面もある一方で、行き過ぎた監視に繋がる可能性もある。ツールを導入するかどうかは、チームのあり方や関係性を見定める必要がありそうだ。

(画像=Pixabayより)

■堀口佐知
ガジェット初心者のWebライター兼イラストレーター(自称)。女性向けソーシャルゲームや男性声優関連の記事を多く執筆している。

〈Source〉
https://www.theguardian.com/us-news/2021/sep/05/covid-coronavirus-work-home-office-surveillance

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