名作漫画・アニメがYouTubeで続々無料配信 YouTube×漫画が生み出す新たな表現方法“YouTube漫画”とは?
YouTubeでは、イラストと音声を使ったアニメ風のチャンネルがひとつの人気ジャンルとなっているが、ここ最近は、実際にテレビで放送されていたアニメや、コミック誌で連載されいた漫画の公式YouTubeチャンネルが密かに注目されているのをご存知だろうか。
今回は、今月新しく登場した“YouTube漫画”チャンネルに注目し、YouTube×漫画の相性のよさを紐解いていきたい。
まず、8月4日に配信をスタートしたのが、小学館発行の青年コミック誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて、2004~2019年まで連載された『闇金ウシジマくん』の公式チャンネルだ。
ドラマ・映画化もされて人気を博した同作だが、世の中にあるダークなテーマを取り扱うYouTube漫画チャンネル「ヒューマンバグ大学_闇の漫画」を運営する、映像制作会社「ケイコンテンツ」により、今度は“動く漫画”として蘇った。
1話あたり10分前後にまとめられた動画は、原作のコマを各シーンの雰囲気に合わせて動かし、声優陣によるリアリティのあるアフレコを加えたテンポのよい編集で、原作の世界観を見事に表現。漫画でもアニメでもない、“YouTube漫画”という新たなコンテンツを確立している。
『闇金ウシジマくん』と「ヒューマンバグ大学_闇の漫画」は、どちらも“追い込まれた人間の闇”をテーマにした作品。YouTubeでは、テレビなどのメディアでは取り上げられない人間や世の中の“闇”をテーマにした動画は再生数が高くなる傾向にあるが、闇を扱う人気作品の化学反応によってできたこのチャンネルも、たちまち沼にハマってしまう人が続出するだろう。
同月8日には、漫画家・藤子不二雄(A)が描いたブラックユーモア漫画『笑ゥせぇるすまん』のテレビアニメを、デジタルリマスター版にて期間限定配信。謎のセールスマン「喪黒福造」のインパクトあるビジュアルは、誰もが一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
『笑ゥせぇるすまん』の絵柄は一見すると子ども向けに思えるが、実は上記で紹介した『闇金ウシジマくん』などと同様に、“人間の心の闇”に迫った大人向けの作品。YouTube視聴者の年齢層が広がっていることもあり、このチャンネルはリアルタイムで同作を見ていた大人をメインターゲットに、“闇”というテーマに惹かれた若い世代の視聴者も取り込めそうだ。
今後は、100を超えるエピソードを公開予定で、9月以降は『プロゴルファー猿』や『怪物くん』『忍者ハットリくん』など、藤子不二雄(A)作品の公式YouTubeチャンネルも続々開設予定。過去の懐かしい作品が、YouTubeを通して今の世代に受け継がれていく。
そして同月12日、アニメの“新作”をYouTube上で更新する公式チャンネルも登場した。それが、小学館が発行する小学生向けの漫画雑誌『月刊コロコロコミック』などで連載され、現在も人気のギャグ漫画『でんぢゃらすじーさん』シリーズだ。同作の連載開始20周年を記念した企画のひとつとして、YouTubeのアニメチャンネルが誕生した。
新作アニメは、YouTuberをテーマにするなどYouTube視聴者に向けたオリジナルの内容で描かれている。小学生の頃に原作を読んでいた大人は懐かしく感じられるほか、現在小学生の子どもたちにも、新たなブームを巻き起こすかもしれない。
今回紹介した3つのチャンネルのように、YouTubeと漫画が融合して生まれた“YouTube漫画”は、要点が短くまとめられた動画を好む傾向にある若い世代の視聴者から、リアルタイムで作品を見ていた大人まで、幅広い世代に受け入れられる新しい漫画・アニメの形だといえる。
今の時代にマッチした新しい表現方法は、今後さまざまな作品に広がっていくのかもしれない。