樋口楓が伝える、インターネットカルチャーの“ドキュメンタリー性” 多彩な活動をあらためて分析してみた

 2016年6月30日がKizuna AI(キズナアイ)が誕生し、2021年に5年目の節目を迎えた。同時に、いまバーチャルYouTuber(VTuber)は転換の時期を迎えているといえよう。

 バーチャルYouTuber四天王と称されたキズナアイ/輝夜月/ミライアカリ/電脳少女シロの4人が中心となって盛り上がっていった2017年〜2018年から、にじさんじ/ホロライブの2社に所属するVTuberらがYouTube上などでの生配信をメインコンテンツとして活発な活動、ネットカルチャーの一端を担ってきた。その影響もあってか、特にコロナ禍のなかにあった2020年を通して、VTuberは大きな飛躍を見せたといえよう。

 もはや彼らの存在感は、これまでインターネットカルチャーというイメージに張り付いていたアングラ/サブカルといったムードを剥ぎ取り、メインストリームのなかへと進出しそうなほどだ。

 その中でも、100名以上のVTuber(ライバー)を擁し、数多くの生配信を届けてくれるだけでなく、他企業とのコラボなどにも積極的にこなし、今年には自社でライブ/フェスティバルを開催するにまで至ったにじさんじは、VTuberのメジャー化/タレント化を推し進める急先鋒とも言えよう存在ではないだろうか。7月19日には1年ぶりに新人ライバー5名がデビュー、初配信からエッジの効いた配信の数々に、ツイッターのトレンド入りするなど、その期待値の高さが伺えてくる。

 今回から、魅力的なにじさんじのバーチャルライバーを紹介していきたいと思う。現在のにじさんじにおいて、「にじさんじ外」での活動が活発で、存在感を放っているといえば、元1期生の樋口楓ではないだろうか。

 2018年から2021年現在まで、にじさんじ内外で出演してきたライブやイベント数は30回以上と随一の出演数を誇る。黎明期のころから活動していることもあり、仲良いVTuberも活動歴が長い方が多く、シンガーとして活躍する天神子兎音、YuNi、富士葵の3人とは“飯団四季”として配信したり、雑談配信のなかでも彼女らの名前がよくあがるなど、仲の良さが伝わってくる。

 ゲーム実況をすれば関西弁混じりの口調で、ときにはゲラゲラと笑い、キレたときの罵倒と声のデカさはあまりにも強烈。ファンはおろかにじさんじのライバーからも「にじさんじを創成期から支え、怒らせたら怖い先輩」として見られることが非常に多い。

【プニキ】マジック点灯してしまった【キレたら終了】

 彼女が特に熱狂的になるのは、愛する野球が絡むときだろう。一家そろって広島カープファンで、雑談配信などでは広島カープについて触れることが多い。その熱さは公式にも伝わっており、著名なカープファンが歌うリレー動画「それ行けカープ」にも参加し、広島カープとのコラボTシャツまで制作されているほどだ。

【公式】それ行けカープ<著名カープファン/リレー映像/2021>

 これまで3年近い配信のなかでも、ポケモン関連ゲームとAPEXのゲーム配信は数多い。イーブイとリーフィアが好きで、雑談の中でもイーブイの話題を挙げ、デレデレとしてしまうこともしばしばだ。昨年から『Apex Legends』のプレイ配信をするようになり、FPS系ストリーマーやプロゲーマーとの絡んだコラボ配信が増え、プロ・アマを含めたFPS大会にも出場することもあるほどだ。

 にじさんじを知る人ならば、彼女の気性の荒さを思い出すかたも多いかもしれない。にじさんじ運営側からのお達しで「でろーん暴言はかないリスト(NG用語・放送禁止用語の勉強ノート)」をつけるようにと指示されたエピソードが存在するなど、キャリア前半や本来のパーソナリティについて書いていくと、どうしても『気性の荒さ』に言及せざるをえないが、近年は彼女の真面目な性格が目立ってきていることも記していきたい。

 現在では標準語を使った丁寧な口調が当たり前になり、頭の回転も速いこともあって、にじさんじ主導のイベントによってはMCを任されることもあるほどだ。今年1月からは文化放送超!A&G+で『A&G ARTIST ZONE 樋口楓のTHE CATCH』としてラジオ番組も担当している。「暴言・罵倒」はあくまで一芸にとどめ、堅実なトーク力を持ち合わせた人物であることを見せつけている。

 これまで3年に渡ってこなしてきた雑談配信は数少ないとはいえ、面と向かってリスナーと会話するチャンスということもあり、言葉を選びつつも、自分の気持ちをしっかりと伝えようとしつづける彼女の姿がある。

お雑談をいたします!24【にじさんじ / 樋口楓】

 内容としては、ツイッター上で募った話題から様々にトークを展開、ライブ出演時などの裏話、CD発売時には音源について、自身が参加した配信を振り返っての感想戦などもあり、非常に多岐に渡る。前回から数か月以上空いてしまった「お雑談をいたします!24」(2021年7月15日配信)では、5時間以上に渡ってほぼノンストップでトークしつづけ、彼女のトーク力やファンとの繋がりを大事にする姿勢が伺える配信になった。

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