ニコニコ動画とFlash終了の歴史ーーFLV・SWFからMP4への転換期と、未だ残るFlash形式の謎に迫る

スティーブ・ジョブズの声明を発端として脱Flashへと一転

ニコニコムービーメーカー(無償版:2015年終了)公式サイトより。現行の製品版(有償)からアップロードできるファイル形式にはFLVやMP4なども含まれているが、SWFはない。

 そのニコニコムービーメーカーからアップロードされた動画は、URLのナンバリングが「sm~」ではなく「nm~」となっている。さらにインタラクティブ要素のあるSWFファイルもアップロードされたりした。

 これらに対しニコニコ動画の運営も「ニコニコの穴、バレる」などブログで反応。最終的にセキュリティー上の問題から『Dot Catch - ニコニコ動画にFlashゲームを』『ニコニコ動画を崩壊させるスイッチを作ったが・・・』を記念碑的に残すのみに留めた。

 ちなみにその当時は、iPhoneが発売された時期でもあった。しかし2010年にアップルのスティーブ・ジョブズが「Thoughts on Flash」と題した脱Flashの声明を発表。その後iOSだけでなく、グーグルのAndroidも脱Flashに移行したため、IT業界は対応を迫られていった。

 ニコニコ動画も2015年、ニコニコムービーメーカーからのSWFのアップロードを終了。また翌2016年はアドビが制作ソフトのFlashの名称をAnimateに変更、2020年末までにFlashを全面的に終了することも発表した。

Adobe AIRやRuffleでのコンテンツ再生でFlashは裏方に回る

 今年に入ってからアドビは、1月12日にFlash Playerでのコンテンツ再生をブロックした。Flash Playerへの対応は、昨年までブラウザやアプリ、モバイルのOSで先行していたが、WindowsやMacOSといったPCのOSにおいては、この半年間でもたびたび言及されている。

ハーマンのAdobe AIR公式サイトより。WindowsとMacOSといったPC版のみダウンロードできる。

 ただFlash Playerでのコンテンツ再生がブロックされても、コンテンツそのものを再生する方法がなくなったわけではない。2019年よりアドビからサムスン傘下のハーマンがサポートすることになったAdobe AIRをインストールすればよい(PC版のみ)。

 今まででもAdobe AIRが何なのか分からなくても、いつの間にか知っていたユーザーもいるのではないだろうか。コンテンツによっては再生に必要で、一緒にダウンロードを薦められたり、時には更新を促されたりしていたはずだからだ。

Ruffle公式サイトより。再生環境としてはAdobe AIRより汎用性が高いものになっている。

 例えば日本のユーザーにも親しまれてきた海外サイトのNewgroundsからは、SWFをMP4に変換可能なSwivelをダウンロードできる。このSwivelもまた、再生にAdobe AIRが必要だ。手持ちのSWFファイルがあれば試してみるのもいいかもしれない。

 一方、Adobe AIRよりもFlash Playerのエミュレーターとして開発が始まったRuffleに関心が高いユーザーの方が多いだろう。こちらはオープンソースで有志によって開発されており、Newgroundsなど11団体が支援するスポンサーとして名を連ねている。

アニメーションのジャンル分けは制作ソフトに依存しない。おおむね2Dではカットアウト(ゲームではパーツアニメーション)かデジタル作画の2択。

 ここまで記してみると、Flashでも、特にユーザーの愛着が強いのはSWFファイルであるのが改めて分かる。アニメーションなどの映像ならともかく、ゲームなどインタラクティブ要素があるものは動画ではないため、MP4に変換できないというのが大きい。

 なお制作ソフトのAnimateの公式サイトを見てみると、今のところ一部にFlashの文言が残されている。これはやはりAdobe AIRのサポートが続いているからでもあるようにも見える。今後どのような対応がなされることになるのだろうか。

■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「激変!アニメーション環境 平成30年史+1」など。

Adobe AIR Runtime:https://airsdk.harman.com/runtime
Ruffle:https://ruffle.rs/
Adobe Animate:https://www.adobe.com/jp/products/animate.html

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