コロナ禍でもオーダーメイドスーツが求められた理由 D2Cブランドの先駆者が語るテクノロジーファッションの成功哲学

FABRIC TOKYOインタビュー

ビジネスカジュアルの商品が、コロナ禍の消費需要にマッチ

 かくして、国内アパレルD2Cブランドの成功事例や急成長スタートアップとして注目を浴びるようになったFABRIC TOKYO。

 しかし、2020年に起きたコロナ禍は、社会経済に多大な影響を与えるほどの出来事となり、アパレル産業は今もなお苦境を強いられる状況が続いている。

 そんななか、FABRIC TOKYOは苦しい社会情勢に晒されながらも、増収を維持できたという。

 コロナ禍でも持ちこたえることができたのは「以前からフォーマルだけでなく、ビジネスカジュアルのラインナップも拡充しようと企画していたから」だと森氏は振り返る。

 「お客様のアンケートを見ていると、『もっとカジュアルな商品も出してほしい』という要望を多くいただいていたので、ビジネスカジュアルの商品を2020S/Sから投入しようと画策していました。2020年2月くらいから、コロナの影響が出始めて緊急事態宣言が発令された2〜3ヶ月は主力のオーダースーツの購入が昨対で1/3まで減少したんです。対して、新しく発売したカジュアルジャケットの方はテレワーク用の新調需要も相まって、想像以上の反響だった。他社では行なっていないようなテクノロジーの活用やお預かりしている顧客データを分析し、商品開発に生かしていく姿勢が功を奏したと考えています」

女性向け新ブランドの設立や「RaaS」構想の実現を見据える

 今年でブランド設立から7年。これからも新規ブランドの立ち上げや、新たなビジネスモデル「RaaS(Retail as a Service:小売りのサービス化)」構想の実現に向け、さらなる事業成長を目指すFABRIC TOKYO。

 最後に森氏へ今後の展望について聞いた。

 「最近は女性のお客様も増えている状況で、スーツ以外のアパレルラインで女性向けのD2Cブランドのローンチを予定しています。また、メンズパターンを楽しみたい女性やLGBTQの方など、性別というラベルに関係なくより広いお客様に喜んでいただくために、インクルーシブ(包括的)をテーマにした『FABRIC TOKYO think Inclusive Fashion』もさらに推進していきたい。そして、物販だけで終わってしまうと豊かな洋服体験を提供するには限界があるので、月額制のアフターサービス『FABRIC TOKYO 100』においてパーソナルスタイリングやクリーニングなども取り入れ、より充実させることを視野に入れている。AppleやAmazonのように、長い利用体験を創出するための仕組みづくりを参考に、購買後の顧客体験も追求していければと思います」

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