『ファミリージョッキー』から『ウマ娘 プリティーダービー』まで――“ウマのゲームミュージック史”を振り返る

『StarHorse/スターホース』

GO SEGA 60th anniversary

 任天堂レジャーシステムが1975年に発売した『EVR RACE』は「映像を使った競馬ゲーム」の第一号だが、同作に先駆ける形でセガ・エンタープライゼス(現・セガ)が1974年に発表した『HARNESS RACE/ハーネスレース』は、国産競馬メダルゲームのパイオニアだ。その後も、『GRAND DERBY』(1981年)、『SUPER DERBY』(1984年)、『WORLD DERBY』(1988年)、『ROYAL ASCOT』(1991年)、『ROYAL ASCOTII』(1997年)などを展開してきた同社が2000年に発表したタイトルが『StarHorse/スターホース』だ。同作はコンスタントにバージョンアップを重ね、コナミの『GI』シリーズに比肩する長寿シリーズへと成長してゆく。2021年3月リリースの、セガ創立60周年記念アルバム『GO SEGA 60th ANNIVERSARY Album』に、「StarHorse(初代スタホメドレー)」が収録されている(初CD化)。コンポーザーは小河幸男(『バーチャファイター4』『オシャレ魔女 ラブandベリー』など)、清水一人(『シャカっとタンバリン!』『UFOキャッチャー』『新甲虫王者ムシキング』など)、興野亮平(『UFOキャッチャー』『ガチャマンボ』『maimai』シリーズなど)の3人。

『GO SEGA - 60th ANNIVERSARY Album -』
https://60th.sega.com/contents/goods/item_cd-gosega.html

『DERBY OWNERS CLUB/ダービーオーナーズクラブ』

DERBY OWNERS CLUB Perfect Audio Collection

 前述の『StarHorse』や、家庭用ゲーム『ダビつく ダービー馬をつくろう!』(2000年7月発売)に先駆けてセガが1999年10月に発表した『DERBY OWNERS CLUB/ダービーオーナーズクラブ』(DOC)は、大型筐体による対戦型競走馬育成シミュレーションゲーム。アーケードゲームにおいて磁気カードを初めて採用したタイトルであり、育成した競争馬のデータをカードに保存することで継続的なゲームプレイを可能にし、幅広いプレイヤーからの支持を獲得した。アーケードでは『DERBY OWNERS CLUB 2009 ride for the live』(2009年6月稼働)までシリーズが展開され、2014年12月にネットワークサービスを終了した。その後、2012年8月にはスマートフォン用ゲームアプリ『DERBY OWNERS CLUB- Next Furlong-』が配信され、2019年1月まで運営された。

DERBY OWNERS CLUB 2008 feel the rush Soundtrack

 2006年1月にリリースされた『Derby Owners Club Perfect Audio Collection -History of DOC~DOC ONLINE-』は、初代、『DERBY OWNERS CLUB 2000』(2000年6月稼働)、『DERBY OWNERS CLUB II』(2001年10月稼働)、海外版『DERBY OWNERS CLUB WORLD EDITON』(2002年稼働)のアーケード4タイトルと、PC版『DERBY OWNERS CLUB ONLINE』(2004年12月発売)に使用された音楽を一挙収録した2枚組サントラ。メインコンポーザーは、レーシングゲーム『ル・マン24』を手がけたTAI-HEI(佐藤大平)と、音楽ゲーム『CRACKIN' DJ』を手がけた福山光晴。シンフォニック/フュージョン色の強いTAI-HEIと、聴き疲れしない(バックグラウンド性の強い)アコースティックな作風と耳に残るメロディの両立を目指した福山、それぞれの音楽性の違いも楽しめる。さらにTAI-HEIは各種JRAファンファーレ(作曲:すぎやまこういち、川口真、宮川泰)のゲーム用アレンジを担当し、福山は『WORLD EDITION』でオリジナルファンファーレを制作している。慣習的な楽器編成や常套句的なフレーズとリズムを持つファンファーレでいかにバリエーションを出すかで、福山は苦心したという。また、サウンドエフェクトをメインに担当したHiro(川口博史)が『DERBY OWNERS CLUB ONLINE』に「happy market」(イベントスペース共通)を提供している。同曲はクリスマスソング「Jingle Bells」(編曲:福山光晴/ヴォーカル&コーラス:光吉猛修)とのメドレーでサントラに収録された。

 2008年3月に『DERBY OWNERS CLUB 2008 feel the rush』が稼働。専用ターミナル筐体やICカードが導入された。音楽面では、オリジナルファンファーレ演奏に吹奏楽団シエナ・ウインド・オーケストラの金管打楽器セクション、BGM演奏にチェコ・プラハの管弦楽団フィルムハーモニック・オーケストラ(セガのアーケードタイトルでは『WORLD CLUB Champion Football』のスコア演奏も同楽団が担当した)を起用。サウンドディレクター&メインコンポーザーは福山光晴。「本馬場入場(重賞)」の作曲を光吉猛修が手がけた。光吉は福山と共にチェコに赴き、オーケストラ収録のディレクションにも携わっている。本格的にシネマティックなスケール感を獲得した一連の本馬場入場曲はもちろんのこと、コース紹介やランキング、ウイニングランBGMに至るまでゴージャスな粋を尽くしたサウンドを聴かせる。慈愛の響きに満ちた「親馬選択&牧場」「親馬併走&仔馬誕生~ネームエントリー」も素晴らしい。なお、「本馬場入場(G1)」と「親馬併走&仔馬誕生~ネームエントリー」は、前述の『GO SEGA 60th ANNIVERSARY Album』にも収録(DISC 4 Track3)されている。2009年2月にリリースされた『DERBY OWNERS CLUB 2008 feel the rush Soundtrack』では実機搭載版音源に加え、ロケーションテスト期間中の筐体に搭載された仮バージョンの楽曲も併録。さらに、弦楽三重奏をフィーチャーしたアレンジ「Brave Runner」(編曲:福山光晴)、ゴスペルコーラスが賑やかに彩るヴォーカルアレンジ「We Trust in You」(編曲:青木千紘)の2曲が本盤のために用意された。

『ソリティ馬』

 『ポケットモンスター』シリーズを生み出したゲームフリークが、自社初のパブリッシュタイトルとして制作し、2013年7月に配信された3DSダウンロード用ソフト『ソリティ馬』は、ゲームシステムにソリティアを組み込んだポップでキュートな競馬シミュレーションゲーム。ソリティアのゲームパートを上手くこなせばこなすほど馬を自由に動かすことができ、レースを有利に進められる。ゲームフリーク主催によるファン参加型の公式大会「ゲーフリカップ」が3回にわたり開催され盛り上がりをみせたほか、2014年9月発表の日本ゲーム大賞2014年間作品部門において特別賞を受賞。2014年11月にはスマートフォン版が配信され、『ソリティ馬 オリジナルサウンドトラック』もリリースされた。音楽は、ゲームフリークでサウンドデザイナーとして『ポケットモンスター 金/銀』以降のポケモンシリーズや、『クリックメディック』『スクリューブレイカー 轟振どりるれろ』などを手がけてきた一之瀬剛。無類の競馬好きとしても知られ、本作の企画・立案にも関わっている。

『ソリティ馬』の開発者に聞く! ゲームフリーク初パブリッシングタイトルは、なぜ競馬+ソリティアだったのか?【ファミ通.com|2013年8月14日掲載】
https://www.famitsu.com/news/201308/14038252.html

【全文公開】競馬の面白さは「実況」にあり? 「ダビスタ」開発者・薗部博之氏✕ゲームフリーク「ソリティ馬」開発者 が語る競馬ゲームの“極意”【電ファミニコゲーマー|2016年4月28日掲載】
https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/dabisuta

Solitaiba

 90年代に競馬との出会いとほぼ時を同じくして『ダビスタ』にのめりこみ、競馬愛を深めていったという一之瀬は、自身の競馬体験や数々の競馬ゲームから受けてきた影響を『ソリティ馬』に少なからず投影した。本馬場入場をイメージしたタイトルテーマや、牧場のテーマ「希望のうまれる場所」では正統派のシンフォニックサウンドを聴かせ、「走り出す希望(新馬・未勝利レース)」「Yes Come On Solitaiba!(OP・G3・G2)」では、フュージョン/プログレタッチのキレのある展開が爽快な印象をもたらしている。ちなみに「走り出す希望」には、一之瀬のお気に入りである「東京競馬場の閉門曲」のちょっとしたオマージュも込められているという。「Yes Come On Solitaiba!」は、ヴォーカルアレンジ(作詞:佐藤仁美/編曲:加藤浩義[ノイジークローク]/歌:鈴木咲・つばめ[田上玲子]・吉田宏信/コーラス:SAK.)が、サントラのボーナスソングとして収録された。ヴォーカルサンプリングも交えてグルーヴィーなビッグビートで攻めた「Funky Monkey Style」(古馬G1レース)は『ギャロップレーサー』の音楽的アプローチからインスピレーションを受けてできた曲という点も興味深い。また、「Jazz Racing Jam(3歳G1レース)」「ANZANKIGAN Swing(希望の誕生)」(スマートフォン版専用曲)ではスウィングジャズを聴かせ、凱旋門賞をモチーフにしたゲームオリジナルの海外レース「キングスゲート」で流れる「頂点への挑戦」は、壮麗なコーラスに彩られた白熱のエピックサウンドが圧巻だ。

特集「『ポケットモンスター』受け継がれる音楽のバトン」特別編:祝・TGS 日本ゲーム大賞 2014 特別賞!一之瀬さんに聞く『ソリティ馬』【2083WEB】
https://www.2083.jp/contents/201410gamefreak/page_04.html

ゲームフリークは競馬フリーク!?――ゲームフリーク×4Gamerで唐突に「日本ダービー」の結果予想企画を実施してみた【4Gamer.net|2014年5月28日掲載】
https://www.4gamer.net/games/226/G022607/20140526056/

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