ポケモン25周年で振り返る、アニメの設定を生かした初代『ピカチュウ版』の魅力
2021年2月27日は、任天堂の大人気シリーズ『ポケットモンスター』の25周年記念日となる。1996年に発売された『ポケットモンスター 赤・緑』以降、本シリーズは世代を超えて多くのプレイヤーに愛されてきた。しかし、じつはそんな初代ポケモンに”亜種”ともいうべき作品があったことをご存知だろうか? 今回は、知る人ぞ知る『ポケットモンスター ピカチュウ』の思い出を語る。
大人気ポケモン・ピカチュウと冒険できる
『ポケットモンスター ピカチュウ』は、1998年9月12日に任天堂から発売されたゲームボーイ専用ソフトだ。「ポケモン」と呼ばれる架空の生き物を捕まえて育成しバトルをするゲームシステムは、後発のさまざまなRPGに影響を与えた。そんなポケモンの中でもいわゆる”第一世代”と呼ばれる作品には、1996年2月にリリースされた『赤・緑』と、同年10月に発売された『青』が含まれる。今回紹介する『ピカチュウ版』は、第一世代タイトルのマイナーチェンジ版として、大人気ポケモン「ピカチュウ」にフォーカスを当てているのが特徴だ。
そもそも、今でこそ国民的人気キャラクターとなったピカチュウだが、じつは『赤・緑』発売時点ではそれほど目立つ存在ではなかった。ピカチュウはプレイヤーが最初に相棒として選択するポケモンでもなければ、バトルにおける性能が特別強いわけでもなく、序盤に通過する「トキワの森」に出現する一ポケモンでしかなかったのである。しかし、その愛らしいデザインやゲーム内のエンカウント率が低いという希少性などが人気を呼び、遂には1997年から放送が開始されたアニメ版『ポケットモンスター』の主役を張るまでになったのである。
そして、そんなアニメ版の反響を受けてリリースされた『ポケットモンスター ピカチュウ』では、アニメの設定に準じたさまざまな仕様変更が加えられているのだ。たとえば、本来ポケモンシリーズは、最初の相棒となるポケモンを「ほのお」「くさ」「みず」の3タイプから選択する。しかし、『ポケットモンスター ピカチュウ』は最初のポケモンが必ずピカチュウになる。
このピカチュウはアニメ版よろしくモンスターボールに入ることを嫌がり、主人公の後ろを歩いてついてくる。プレイヤーが振り向いてボタンを押すと、そのときの機嫌に応じてさまざまなリアクションをしてくれるのも印象的だった。リアクションはバトルの勝敗や場所によって変わるため、ピカチュウと一緒に冒険していると感じられるだろう。ピカチュウは預けたり交換することも可能だが、どうしても一緒に冒険したくなり最後まで主力メンバーとして活躍してもらったことを記憶している。さらに、本作はゲームボーイのタイトルでありながら、ピカチュウの鳴き声にアニメ版で声優を務めた大谷育江の声を用いているのも特徴だろう。とはいえ本物の声ではなく、大谷育江の声を録音して音声波形に変換し、ゲームボーイ上で再現するという当時としては珍しい技術を用いて作成されたものだ。このような任天堂のこだわりが垣間見えるのも本作の面白いポイントといえる。