『リトルナイトメア 2』シリーズ最新作に受け継がれる、前作のアイデンティティ

 2021年2月10日、『LITTLE NIGHTMARES II-リトルナイトメア 2-』が発売となる。

 かつて無名の新規IPだったタイトルは、4年の時を経て人気シリーズとなり、2021年屈指の注目作を贈り出すまでとなった。本稿では、約1週間後に迫ったシリーズ最新作の発売を入り口に、前作『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-』の作品的背景を振り返っていく。

困難と謎に立ち向かう少女を描く3Dサスペンスアドベンチャー

Little Nightmares Accolades Trailer | PS4, XB1, PC

 『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-(以下、リトルナイトメア)』は、スウェーデンのディベロッパー・Tarsier Studioが開発したサスペンスアドベンチャーだ。2017年4月、同名の第1作がPlayStation4/Xbox One/Steam向けにリリースされて以降、追加の物語である『Secrets of The Maw』から3つのダウンロードコンテンツ『The Depths-深淵-』『The Hideaway-ひみつの部屋-』『The Residence-静寂のアトリエ-』が続々と配信されている。2018年6月には、本編とこれらのDLC、追加コスチュームなどを収録した『LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア- Deluxe Edition』がPlayStation4/Nintendo Switchで発売に。リリースから1年という短い期間で、同タイトルは主要な家庭用プラットフォームすべてでプレイできる作品となった。

 『リトルナイトメア』において、プレイヤーは、囚われた少女「シックス」となり、「胃袋」の名を持つ巨大な船舶「The Maw」からの脱出を目指す。道中に待ち受ける幾多の困難や謎を、行動と知恵で乗り越えていくことが同タイトルのゲーム性だ。少女の視点から見た世界には、大人の想像を超える遊び心と恐怖が溢れている。2つのエッセンスを程よいバランスで両立した『リトルナイトメア』の世界は、発売から4年が経った現在もなお、多くのファンに愛され続けている。

描かれたテーマは“食への欲望”

 このサスペンスアドベンチャーに描かれているのは、(よくあるサバイバルホラーにありがちな)ただ暴力的なだけの恐怖ではない。『リトルナイトメア』には、物語全体を通じて一貫したテーマが存在している。それが“食への欲望”だ。

 舞台となる巨大な船舶が「胃袋」という名で呼ばれていることからもわかるとおり、同タイトルに登場するキャラクターたちはみな、「食」となんらかの接点を持っている。あるキャラクターは食事を調理するコックとして、またあるキャラクターは食材の調達者としてThe Mawに配置されており、当然ながらそこには食べる側である客も存在する。彼らは主人公を“ただの食材”として追い立て、ときに捕らえては鍋や食料庫、加工機、口の中といった食材のあるべき場所に放り込む。シックスの冒険は、自らが食べられてしまわないための逃避行なのだ。

 この『リトルナイトメア』の世界の理の上では、主人公でさえ、その欲望に抗えない存在として描かれる。長い探索の途中で時折お腹を空かすシックスは、空腹に耐えきれず、目に映ったものを見境なく口へと運んでしまうのだ。そのラインナップには、私たちが日頃の食生活で摂取しているようなものにくわえ、それ以外のもの――生きたネズミ、相棒、死人なども登場する。物語が進むにつれて、シックスの食の対象が理解しがたいものとなっていく点に、この世界における食の耽溺性を感じずにはいられない。上述の客たちは同タイトルの中で、食事に対して異常なまでの執着を見せる。それは、さながら『千と千尋の神隠し』で豚となってしまった千尋の両親のような姿だ。やがてはシックスも、彼らのようになってしまうのかもしれない。