Apple、ティム・クックCEOらが“人種の公平性”に関する新プロジェクトについて語る

 アメリカ現地時間13日の朝、アメリカ大手メディアCBSが放送する朝の報道番組「CBS This Morning」にAppleのティム・クックCEOと同社ヴァイス・プレジデントで環境問題と教育に関する責任者でもあるリサ・ジャクソン氏が出演し、インタビューに答えた。インタビューではAppleの社会問題に対する姿勢が改めて語られ、話題のあのアプリにも言及された。

1億ドルを出資した新プロジェクトとは

 CBS This Morningにクック氏らが出演した前日の12日、CBSはAppleが新しいイニシアティブを発表するとツイートし、ただし製品に関することではない、とも補足していた。その発表とは、ジャクソン氏が13日のインタビューで語ったAppleの「人種の公平性と正義に関するイニシアティブ」であった。このイニシアティブの詳細は、US版Apple公式サイトのプレスリリース記事に記載されている。その記事によれば、同イニシアティブは、以下のような3つの柱から構成されている。

・アトランタ大学構内に歴史的黒人大学(Historically black colleges and universities:略称「HBCUs」)の教育活動を支援する教育施設「Propel Center」を設立する(トップ画像参照)。同施設における講義には一流の教員を招き、その講義はアメリカ各地にあるHBCUsにオンラインで提供する。黒人差別に関する映画を発表してきたスパイク・リー監督も招聘される予定。

・今年後半、デトロイトにコーディングとアプリ開発に関する教育を推進する「Apple Developer Academy」を設立する。アメリカの国勢調査によると、デトロイトは多くの黒人の起業家と開発者が活躍している。

・黒人および黒人系起業家の資金調達を促進するために、ベンチャーキャピタルのひとつであるHarlem Capitalとパートナーシップを締結。今後20年間で1,000社への出資を目指す。

 以上の施策のために、Appleは1億ドル(約104億円)を出資すると発表している。

10年前より改善されたように思えるが...…

 Appleが発表したような人種の公平性に関する取り組みは、テック業界においてはダイバーシティ(「多様性」を意味する英単語)というキーワードと共に注目されてきたものだ。こうしたなかテック系メディア『COMPUTERWORLD』は2020年9月、アメリカのテック業界におけるダイバーシティに関するアンケート調査について報じた。その記事によると、「テック業界は10年前より有色人種の人々が多くなったと思うか」という質問を有色人種と白人にそれぞれ質問したところ、有色人種の回答者の65%、白人の58%が「そう思う」と答えた。

 COMPUTERWORLDが2020年7月に公開した記事では、アメリカ・テック業界における労働者の人種比率について報じた。2019年のアメリカ国勢調査から算出すると、アメリカの人口に対する白人の割合は60%、黒人は13%である。対してテック業界における人種比率は白人が68%、黒人が7%である。この結果から、テック業界は白人の比率が平均より高いと言える。

 マサチューセッツ州にあるアマースト大学は2018年1月、シリコンバレーに拠点をおくテック系企業に調査対象をしぼった人種比率に関するレポートを発表している。そのレポートによれば、調査できた177のテック系企業大手(AppleやGoogleが含まれる)のエグゼクティブ職における白人の比率は73.3%に対し、黒人は1.4%に過ぎなかった。

 以上の調査から、アメリカのテック業界におけるダイバーシティは10年前に比べたら改善されたかもしれないが、改善の余地がまだ大いにあるといえる。

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