緊急事態宣言下でさらに注目 コロナ禍で誕生した「食送付エンタメ」の現在

食と人類の共進化

 最後に、食送付エンタメの未来について考えてみたい。

 今後、技術が進んでいった先で、食送付エンタメはどのように進化してゆくのだろうか。

 一つには、AI技術と組み合わさってゆく可能性が想像できる。

 岩岡ヒサエ『孤食ロボット』という漫画作品の中では、とある飲食店の景品として、単身者のみにプレゼントされるロボットが登場する。このロボットは、食事をすべて作ってくれるようなことはしないが、食事にアドバイスをしてくれたり、寂しさを癒やしてくれる機能がある。

 もう一つの可能性として、VR技術との組み合わせもあり得るだろう。自分の作品で恐縮だが、筆者が原作を務め、マンガミライハッカソンで大賞を取った短編マンガ『Her Tastes』では、口内の感覚を共有できるデバイスが流通した世界で起こるトラブルが描かれている。

 現在の「食送付」文化にも、望まない他人の家にピザを送りつけるなどの嫌がらせは存在しているため、未来においても斜め上のトラブルが発生することは想像に難くない。

 未来ではこのように、食送付のさらに新しい形も生まれてくるであろう。

 人類が生存圏を拡大してゆくにつれ、食の楽しさをどう共有してゆくかは大きな課題になってゆく。食送付エンタメは、コロナ禍の一過的な文化で終わらず、人類の意外な進化へと繋がってゆくかもしれない。

■宮本道人(みやもと・どうじん)
科学文化作家、応用文学者。フィクションと科学技術の新しい関係を築くべく、研究・評論・創作。コロナ禍以降はリモート社会における創作プロセスの分析も行っている。編著『プレイヤーはどこへ行くのか』、対談連載「VRメディア評論」(日本バーチャルリアリティ学会誌)など。1989年生。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。筑波大学システム情報系研究員。株式会社ゼロアイデア代表取締役。Twitter:@dohjinia

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