“あの人のゲームヒストリー”第十五回:宇内梨沙

「勇気はゲームが育んでくれた」 TBS・宇内梨沙アナウンサーが語る“ゲームへの愛情と実況ch開設の経緯”

 ゲーム好きの著名人・文化人にインタビューし、ゲーム遍歴や、ゲームから受けた影響などを聞く連載“あの人のゲームヒストリー”。今回登場するのは、TBSのアナウンサーとして活躍する宇内梨沙だ。

 宇内は11月にYouTubeチャンネル『ゲーム実況はじめました。~女子アナゲーマー宇内e~』を開設。担当するラジオ番組『アフター6ジャンクション(ラジオ)』やSNSでも、折に触れて自身のゲーム好きを公言していたが、それらの“好き”が前面に出た実況がゲームファンからも好評だ。

 今回はそんな宇内に、幼少期からゲーム遍歴や思い出のタイトル、ゲームによって人生が変わったエピソード、チャンネル開設の経緯、ゲーム実況への並々ならぬ思いなどについて、番組でも共演経験のあるゲームジャーナリスト・批評家・編集者のジニ(Jini)が話を聞いた。(編集部)

宇内梨沙(うない・りさ)
TBSアナウンサー。『ひるおび!』『Bizスクエア』『有田プレビュールーム』『アフター6ジャンクション(ラジオ)』を担当。
YouTubeチャンネル『ゲーム実況はじめました。~女子アナゲーマー宇内e~』を2020年11月に開設。

「『FF』などのゲームで世界を救ってきたからこそ、持てた勇気もあった」

ーー宇内さんは女性のアナウンサーという立場で珍しく、ラジオ(『アフター6ジャンクション』など)でゲーム愛がさく裂するトークをされていますが、そもそもビデオゲームと最初に接点を持ったのはいつ頃でしょうか。

宇内梨沙(以下、宇内):兄が二人いて、自分が末っ子だったので、3~4歳の頃には家にファミコンがあって、2人の兄がそれで遊んでいる姿を後ろから眺めていましたね。実際に自分でゲーマーとしてデビューしたのは『ポケットモンスター 赤』で、放課後には友達と集まって黙々と遊ぶぐらい夢中になっていました。トキワの森でピカチュウを探して草むらをウロウロしたり、あと確かサンダーか、ファイヤーを捕まえようとして攻撃したら倒れちゃったなんてことまで、今でも全部覚えています。それからもクリスマスやお正月に買ってもらったゲームを3人でシェアして遊んでいたので、ゲームにのめり込める環境だったと思います。

ーーすごく羨ましい環境ですね。ご兄妹で一緒にゲームを遊ぶこともあったんでしょうか?

宇内:本当にずっと一緒に遊んでいましたね。スーパーファミコンの時は『星のカービィ スーパーデラックス』、『がんばれゴエモン』シリーズや特に『ボンバーマン』でよく遊んでいました。長男は当時小学6年生ぐらいで、私とは5歳も離れていて、その年頃の5歳差ってすごい差じゃないですか。だからずっとボコボコに負けてたんですけど、それでもずっと遊べるぐらい楽しかったですね

ーーお兄さんは妹のためにわざと負けてくれる……なんてことは?

宇内:いや、全然(笑)。むしろわざわざいじめてくるレベルで。NINTENDO64が出てからも、『マリオカート』や『マリオパーティ』シリーズなんかで遊んでいたんですが、一番白熱したのが『ゴールデンアイ 007』。学校から帰ったらすぐにゲームをつけて遊んでました。このゲーム一つの画面を分割して遊ぶので、対戦相手の画面を見るとどこにいるかもわかっちゃうんですけど、その対策でわざと床を見たり。どのキャラクターを使うか選べるので、一番背が低くて弾が当たりにくいオッドジョブというちょび髭のおじさんが有利だとか、色々と兄弟の間で研究していました。

ーー中でも宇内さんにとって特に印象深いゲームは何でしょうか。

宇内:自分ひとりで最初に没頭したゲームが、『FF10(FINAL FANTASY X)』でした。特に物語の中盤に、ラスボスであるシンを倒すためにヒロインであるユウナを犠牲にしなきゃいけないことがわかるシーンで、リュックというキャラクターが「ユウナは死んじゃうんだよ」って叫ぶ台詞があるんですけど、そこで「知らないの、俺だけかよ」って愕然とする主人公・ティーダのリアクションを含めて、とにかくグッと来て。そして、2人の成就できない関係性がわかった後でマカラーニャ湖のキスシーンを見た時に、思わず泣いちゃいましたね。「泣いたり感動できる物語がゲームの世界にもあるんだ、日本のRPGってすごいな」という衝撃がありました。

ーー他のFFシリーズもプレイされていましたよね。

宇内:『FF10』に衝撃を受けて、そのまま『X-2』、『V』、『VII』、『VIII』、『IX』と遡って遊んだり、その後に発売された『XIII』や『XV』も遊んできました。もちろん次に発売される『XVI』も楽しみです。

ーーそこまで遊ばれている中で、特に好きなFFってありますか?

宇内:いやー、もうそれは『FF10』ですよ! でも一番新しい『FF7R(ファイナルファンタジーVII リメイク)』も良かったな……。原作の『FF7』も好きなんですけど、そこから『FF7』は『CC FF7(クライシス コア ファイナルファンタジーVII)』、『FF7 AC(ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン)』や『DC FF7(ダージュ オブ ケルベロス ファイナルファンタジーVII)』といった外伝作品を次々に出していて、その中で3D表現の技術も進化して、カクカクのポリゴンからよりリアルになったり声優さんの声があてられるようになったんです。そうした積み重ねの中で、『FF7』のキャラクターやストーリーのイメージが100%、想像通りに再現されていて、昔のファンでも異論がないぐらい丁寧な、素晴らしいリメイクだったんですよね。その上で、ただ再現するだけじゃなくて、原作にない展開が後半から徐々に展開されていって、新しい『FF7』へのワクワク感もあって、本当に良かったです。

ーー宇内さんの濃密なゲーム遍歴には驚くばかりですが、そうしたゲームからどのような影響を受けましたか?

宇内:『FF』などのゲームで世界を救ってきたからこそ、持てた勇気もあったと思います。元々自分の中に正義感みたいなものがあったと思うんですが、小学生の頃は自分の考えを表に出すことができませんでした。そんな中、クラスにはすごく影響力のある女子がいて、その子に気に入られるかどうかで学校生活が決まってしまうような小学校時代。そういう関係性にストレスを感じていた時期でもありました。でも中学校に進学して、他の小学校から入ってきた子と関係を築くようになると、冷静に自己評価ができるようになって。そこから自分にも自身が湧くようになり、その影響力のあった女子と対等な関係を築くために勇気を出して放課後、その子を呼び出して、「人を傷つけるような物言いはやめてほしい」って言ったんですよね。すると、意外にも打たれ弱いのか、私にそう言われたのに驚いて。そこからすごく優しい子になったんですよ。いま振り返ると、そこが私にとっても大きな転換点だったし、その勇気はゲームが育んでくれたのかなと思います。

ーーそれはとても記憶に残る経験ですよね。それからゲームを通じて成長を感じることはありましたか?

宇内:『バイオハザード』を自力で遊べるようにもなりました。元々ホラーゲームには興味があったんですが、自分でプレイするのは怖いので兄の横で見ているだけでした。でも中学生になって色んな経験をしたことで自信がついたからなのか、初めて『バイオハザード4』に挑戦して最後までクリアできたんです。「自分、結構強くなったなぁ」って、実感していましたね。

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