山田裕貴が『頼田朝日の方程式。』で話題となった“怪演”のルーツ 過去作から見えてくる限界突破のカギは?

 誤解を恐れずに言うと『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系、以下『せんけす』)は山田裕貴のドラマである。もちろん主演の田中圭がいて、鈴木おさむの脚本があることは大前提だが、山田の存在を抜きにして『せんけす』は成立しない。『頼田朝日の方程式。-最凶の授業-』(ABEMAプレミアム、以下『頼田朝日』)を観ると、そのことがよくわかる。

 山田裕貴は考えている。俳優にとってしんどい時代かもしれない。ドラマや映画の制作本数は増えたが、その分競争も激しく、今の人気が10年後も続いている保証はない。その中で役者として生き残るには何をすればいいのだろうか?

 「怪演」は一つの答えだ。かねてより怪優ゲイリー・オールドマンをリスペクトしていると語る山田(参考:山田裕貴が明かす、俳優としての“現在地” 声優初挑戦で自身に課したハードル)。過剰な身振りと表情、セリフの応酬で視聴者の度肝を抜くこと。『HiGH&LOW』シリーズの村山、『ホームルーム』(MBS)の愛田、『せんけす』の頼田朝日は、山田によって命を吹き込まれた。インパクトだけではない。暴力とユーモア、品行方正と異常性癖、従順さの中に秘められた狂気。二面性のギャップに人は驚き、予想外の事態に言葉を失う。

 しかし、怪演に目を奪われていると、山田の本質を見落とすことになりかねない。どんな役柄にも染まる役者をカメレオン俳優と呼ぶ。山田がその1人であることは確かだが、ただなじむだけではなく、自身のカラーを出しつつ、作品全体のトーンを決定づける能動的な関わり方が持ち味。山田の人気を全国区にした『なつぞら』(NHK総合)では、十勝から東京、ふたたび十勝へ舞台を変える展開で、山田演じる雪次郎の葛藤と熱量によって、開拓者精神というドラマのテーマがより鮮明になった。

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