Unreal Engineで絵本風アニメーションを制作 AnimatorSpaceTokyoで導入を試す実験も
11月28日、オンラインにて『ACTF2020・制作管理シンポジウム』が開催された。本稿では、宇田英男氏(ノーヴォ・代表取締役/スタジオコロリド・ファウンダー)による「テクノロジー×アニメ制作で描く新たなアニメ戦略~絵本×Unreal Engineでのアニメ制作事例の紹介~」から一部を記す。
『青い羽みつけた!』制作におけるUnreal Engine導入の経緯
Unreal Engineに関しては、2月に開催の『ACTF2020』から「ゲームエンジン『Unreal Engine』で2Dアニメ制作? プレビュー中にも描ける『Odyssey(仮称)』開発中」を記事にしている。奇しくも記事をアップした当日は、Unreal Engine 5に関する情報が公開、使用にかかるロイヤリティーの免除額が大幅に引き上げられた日と重なった(上限を粗収入で 1 四半期につき3000ドルから、1タイトルにつき10万ドルへと変更)。
長編『ペンギン・ハイウェイ』などで知られるスタジオコロリドのファウンダー・宇田は、1月に新設されたノーヴォの代表取締役ともなっている。Unreal Engineを開発するEpic Gamesと『ACTF2020』にて出会ったことで、短編アニメーションの企画『青い羽みつけた!』につながった。なお原作として絵本も制作し、11月19日に発売されている(監修:日本野鳥の会)。
「『ペンギン・ハイウェイ』からUnity Technologiesとも付き合いがあるので、ゲームエンジンにはチャレンジできている」と宇田。ノーヴォとしても、まず「何もかもデジタル化すればいいというものではなく、きちんと作品を選定して、それに対してどうデジタルを使っていくのかを考えるのが重要」と思い、オリジナルのIPを作ることにした。
Epic Gamesのエンジニアから得るアドバイスのひとつに、同社が主催している開発資金提供プログラム・Epic MegaGrants(旧:Unreal Dev Grants)もあった。この『青い羽みつけた!』も、Epic MegaGrantsへの応募により採択されたものである。宇田は「制作会社に資金力がないという中での事例とさせてもらっている」と感謝した。
Unreal EngineはNPR(ノンフォトリアル)系での利用は多くないものの、「普遍的な物語のコンテンツに対して、ルックは絵本の手描きの良さを活かす。そこに新しい技術チャレンジができたら」と導入。一方で「折角なのでAIも試してみたいと思ってチャレンジしているが、実際にできるか分からない」とのこと。
アニメーションの本編は1話3分、全6話で制作中。先んじて制作したPVについて、宇田は「テレビシリーズ『ノー・ガンズ・ライフ』(制作:2D・マッドハウス、3D・サイクロングラフィックス)の例もあるので、背景も含めてUnreal Engineでやりたかったが、とりあえずカラスとキャラクターだけ。これを参考にして、本編の制作ではブラッシュアップを行っていく」としていた。
AnimatorSpaceTokyoをデジタル導入を試す場として設立
宇田は「Unreal Engineには物理レンダリングに適した3Dアセット・Megascansがあるので、これを作品に活かすことも実験として興味がある」との一方、「ゲームエンジンを使いたい一番の理由は、処理が高速であること」と挙げた。
次にPVを制作する時点での、スタッフの習得度が示された。Unreal Engineは本業の合間に勉強として触る期間があり、大体6ヶ月くらいで結構できるようになったようだ。そのスタッフは、普段メインとしているソフトがMaya、CG制作が6年目という経歴。PVの制作期間は1ヶ月くらいしかなかったが、1人で行ったそうである。