大ヒット『天穂のサクナヒメ』は現代版『アクトレイザー』? 30年の時を超えた2作品の共通点とは
そして『アクトレイザー』を特徴づけるのがレベルアップのコンセプトだ。主人公である神はいくら戦闘を繰り返しても強くならないのである。人間の総人口が増えたり、何か捧げものを受け取ることでのみ成長する。
つまり信仰心の総量が神の強さといって良いだろう。
難易度はそれなりに高く、いくつかのボスで詰まりやすいが、単純にプレイスキルを高めて正面から突破するよりもレベルアップや魔法選びの工夫が重要だ。
つまり単純にアクションパートだけを頑張っていても攻略はおぼつかないのである。
『サクナヒメ』は今から30年も前に発売された『アクトレイザー』とは世界観や設定において全く共通点はないのだが、この構造を引き継ぎ、大幅にバージョンアップしている。
本作もまた米作りをしてレベルアップを目指すモードと鬼を討伐するアクションモードの二つに分かれているからだ。
プレイスキルが高ければ無理やりにでもアクションパートをクリアできるが、やはり米作りによるレベルアップは欠かせない。
『サクナヒメ』のシナリオは少女のビルドゥングスロマンとして一級であり、和風テイストの世界観は見事の一言。トリッキーなアクションは様々なプレイスタイルが楽しめるし、米作りパートはそれだけで完結できるほど緻密だ。
なにしろ稲作がSNSでトレンドになるくらいで、農水省や農業機械を販売するクボタのHPが攻略資料になるとアクセスが集まるほどである。
天穂のサクナヒメ、最も良い攻略法が農林水産省のホームページによるお米の作り方って聞いて爆笑してる pic.twitter.com/Y1N2rZDOIy
— 璃瑠(りる) (@Excellent_rize) December 8, 2020
管見の範囲において“アクトレイザーっぽい”ゲームはここ30年見当たらなかったが、『サクナヒメ』は間違いなくその系譜に連なるゲームだと言えるだろう。それは単純に2パートで構成されているから似ているという理由に留まらない。
プレイヤーがゲーム主人公に憑依してプレイする際、プレイヤー自身のゲームスキルの上達とゲーム主人公の成長(アクトレイザーの信仰集め、サクナヒメの米作り)が2重構造を成しており、同時にシナリオと融合している点が肝である。
このカラクリがプレイヤーとゲーム主人公の一体化を促しゲーム世界への没入感を高めてくれるのだ。
『ゴースト・オブ・ツシマ』や『フォールアウト』、『アサシンクリード』のような完全に完結した世界で遊ぶ最新の3Dアクションゲームに疲れた人はぜひ『サクナヒメ』を手に取ってほしい。シンプルな横スクロールアクションが見事に21世紀のゲームへと独自進化していることに驚くとともに、どこか懐かしい、不思議な癒しを感じられるはずだ。
■レトロ
昭和の全方位型オタク。最近はサウナがマイブーム。ビジネス系からサブカル系まで幅広くウェブ関係の仕事をカバー。ライター兼YouTuber兼Web制作者で仕事も全方位型 。Twitter/YouTube