真鍋大度が振り返る自身の2020年 Perfumeやムロツヨシなど、コロナ禍でも「エンタメの灯を絶やさず」続けたアクション
今年はコロナ禍により、オンライン開催となった『Inter BEE 2020』。本稿ではライゾマティクスの真鍋大度氏(ファウンダー)による『【IGNITION基調講演】Creative Action > Design Thinking - エンタメの灯を絶やさない 真鍋大度/ライゾマの姿勢、アクション』から一部を記す。
Perfumeやムロツヨシの事例 犬型ロボット・Spotの活用
まず真鍋は「振り返ると、2020年に向けて色々とやってきていた人ほど、ダメージが大きい1年になったのではないか。僕らも夏に控えていた色々なプロジェクトが全てなくなった。ずっと空いた時間を待っているわけにはいかないので、色んなことをやってきた」と挨拶。そして今年、自身の関わったプロジェクトを時系列に沿って紹介していった。
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2月26日からのポンピドゥーセンターでの展示は無事に始まったが、そのオープニングのプレゼンテーションは残念ながらリモートでやることになってしまい、色々と大変だった。作品のプレゼンテーションをやって、Perfumeのドーム公演初日が終わったタイミングで、パリに行く予定だった。Perfumeも2日目(2月26日)が中止になってしまい、ここからどんどんエンタメの公演が中止や延期になっていったように思う。その後に南アフリカのケープタウンで開催された『Design Inbada 2020』に行くのもキャンセルすることになった。一応、来年は出てほしいという話になっているが、どうなることやらという感じ。
3月はSpot(Boston Dynamicsが開発した犬型ロボット)を使って色々と実験していて、『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2020』でアメリカのアーティストとSpotを使った演出をやるというのがあった。『SXSW』が中止になった時に、『Coachella Valley Music and Arts Festival 2020』も中止になるのではないかとなった(結局中止)。『SXSW』が中止になった次の日くらいに、ライブやフェスティバルを中止にさせてはいけないというアナウンスが出て、中止になったイベントを復活させる企画『Uncancelled』が立ち上がったが、状況がどんどん変化していくので、それもなくなってしまった。
4月くらいからどんどん夏のイベントも怪しくなってきて、目先の作業とかもペンディングになり始めた。止まってばかりではいられないと、4月3日から毎週金曜、Twitchで『Staying Tokyo』という番組を始めることにした。Twitchのスタッフは、僕がやっている西海岸とかサンフランシスコのダンス公演を見に来てくれていて、「何かやってよ」という流れから、このタイミングでスタートした。DJをやるにしてもクラブでやるのとは違うので、リモートでできる仕組みを作った。ユニークユーザーの平均は3万人くらいという番組になった。
その一方で実験は色々とやっていて、Twitchでコメントを書くとリモートでSpotをコントロールできるというのをやった。Spot自体は日本では発売されてなかったが、DJと連動させたり、背中につけたスポットライトもDJが動かしたりとか、早期開発者ということで使わせてもらっていた。Zoom飲みとか流行り始めていたけど、Zoomだとグリッド上に並んでしまって普通の公共スペースのようにできなかった。そこでWebRTCを使い、自分の位置を自由に動かして他の人と不特定多数でコミュニケーションを取れて、アイコンを動かしながら自分に近い人の音声だけが聞こえるようなプラットフォーム・Social Distancing Communication Platform(SDCP)を作った。すぐにRemoとかSpatial Chatとかでてきたが、ライゾマの場合は自社で作れる強みもあるのでこのタイミングで作った。
「非同期テック部」の第1回は7万人が見てくれた。大学の同期のムロツヨシさんとは、卒業してからしばらく会っていなかったが、2013年に僕が『情熱大陸』に出たのを見ていたことで再会につながった。「何かやろうよ」と言いながらその当時から止まっていたのが、役者もこのタイミングで全然動けなくなってしまったところで、「リモートで何かできないか」とムロさんが脚本家の上田誠さんを紹介してくれた。マネタイズとか考えずに、とにかくこどもの日に発表したいということで間に合わせたもの。メイキングの公開とかも本編の後に少しづつやったりした。第2回は全天球カメラを使った生放送で、アーカイブしてあるが、本番時の映像は元々想定していたプランと少し違うものになった。生以外では発表していないので、年内にできたらと思っている。