なぜプリントシール機は25年間、若者文化の中心であり続ける? ユーザーと作ってきた“変化”の裏側に迫る

プリ機が果たしたスマートフォンとの“共存”

ーー「盛れる」といえば、スマートフォンのカメラアプリの機能もどんどん進化しています。ユーザーの食い合いは起きていないのでしょうか?

門脇:カメラアプリが登場してから、その質問はよくいただきます。弊社でもカメラアプリ『moru』を作っていますし、競合というよりは共存できるものだと考えています。

ーーそれぞれに、ニーズの差別化ができているということでしょうか?

門脇:カメラアプリの利点は、まずは無料であり、撮影にお金がかかりません。そして、いつでもどこでも撮影できるため、日常を切り取るものとして使われています。一方プリントシール機は、撮影に数百円かかります。ゲームセンターなど限定されている場所にしかないので、その場所に行って撮ったという記念要素が強いのです。実際にゲームセンターなどに行くと、撮影待ちの間に自撮りをしている女の子たちを見かけますし、プリントシール機とカメラアプリは別物と捉えているように思います。

ーー棲み分けができていると。

門脇:それに、プリントシール機の中で撮影している様子を、スマートフォンで撮影して動画にするというユーザーが多かったので、、2018年に発売した『トキメキルール』から、プリ機のカメラの横に「ムービースポット」というスマートフォンを置けるスペースを搭載しています。動画を残すのでしたら、良い画角で撮ってほしいですし。

『トキメキルール』

ーーそういった需要をすぐさま取り入れるのは、クレバーですね。

門脇:その他にも、シール自体を撮影し、SNSに投稿する流れも生まれています。弊社の「SUU」シリーズは、シールが半透明になっているんですが、これは、ユーザーのグループインタビューで、かつてのようにプリ帳が流行らなくなり、シールがお財布に入ったままだとか、シールを使うことがあまり定着しなくなったと知り、素材自体を別のものにすることに挑戦しました。それはユーザーにも好評でした。こんな風に、太陽に透かして撮影すると「映え」るんだそうです。

ーーなるほど。ちなみに、プリントシール機が誕生して四半世紀経過しています。そのなかで、ターゲットの変化は感じますか? あるいは、少子化の影響でファミリー向けを意識しようと考えたりはしませんか?

門脇:基本的にはメインターゲットが高校生なのは変わらないと感じています。「プリントシール機は社会人になったら卒業をしていくもの」という風潮はなくしていきたいです。そこまで「盛り」を強調しない、少し大人向けの機種を考案したり、あるいは『#アオハル』という機種は、大人数でも撮影できるように、カメラを上下に動かすことができます。その機能を使ってカメラを下げてお子様と一緒に撮影するというご家族もいるそうです。昔プリントシール機を楽しんでいた世代が、そうやって利用していただけるのは嬉しいですね。

『#アオハル』

ーー好みの多様化が進む10代の流行をリサーチし続けているなかで、この流行は機種に取り入れる/取り入れないの判断基準はありますか?

門脇:企画を立ち上げてから、新機種をリリースするまで、約1年ほどかかります。女子高生の流行りって、1年後にはどうなっているかわからない。それを念頭において企画を考えてなければならないので、その見極めはとても難しいです。弊社では「マインドJK」と呼んでいるのですが、企画者は女子高生の生の意見を聞くだけではなく、できるだけ女子高生に気持を近づけていき、「自分は1年後、なにが欲しいのか」など流行をキャッチする力や好みの方向性が現役の女子高生と同じような状態の社員が多いです。そのため、ユーザーニーズをしっかりと抑えた機種を開発できています。

ーー最新機種の『CAOLABO(かおラボ)』は、どのようなコンセプトで企画されたのでしょうか。

門脇:女の子たちは、常に自分の顔と向き合って、日々「可愛くなりたい」「おしゃれになりたい」と思っています。そして、近年のパーソナルカラー診断や骨格診断などの流行もあるように、好みは多様化している、憧れる対象が違うからこそ、自分の目の形や顔の系統を知ってよりプリでも盛りたいのではと考え、顔タイプ分析という機能を入れてみました。

 また、ユーザーの大半は女子高生なので、学校にメイクをして行くことができない子たちにも喜んでもらえるように、メイクのパターンも多岐に渡っています。

『CAOLABO』

ーーただ撮影するだけではなく、分析やメイクの要素を加えるとなると、機械の処理も複雑になってくるのでは。写真撮影からユーザーがラクガキに入るまでの間の短い時間に、画像加工やタイプ診断の処理が行われているわけですから。

門脇:ラクガキタイムに入る段階で、すでに「盛れている」写真になっていないと、お客さんのテンションが下がっていまいます。その間に処理をかけないといけないので、もちろん技術の進化もありますが、スマートフォンへの画像転送用のメールアドレス入力の時間をそこで設けていますね。

ーーああ! たしかに、昔の機種はメールアドレス入力は最後にというものが多かったですね。

門脇:そうです。他にも「この機種のおすすめポイント」など、ワンクッション入れるようにして、なるべく体感時間を長くしないようにつとめています。

関連記事