『アイドルマスターミリオンライブ!シアターデイズ』 “カワイイは正義”を支える運営の心構えと愛情

 今年はコロナ禍の影響からオンライン開催となった『CEDEC 2020』。本稿では各セッションから『アイドルマスターミリオンライブ!シアターデイズ』を題目とした「『Brand New 大量生産!』ミリシタにおけるキャラクター量産への取り組み」の模様を記す。

『Brand New 大量生産!』ミリシタにおけるキャラクター量産への取り組み。

 登壇者はバンダイナムコスタジオ第3スタジオ第7プロダクションの阿部貴之(3Dキャラクターパートリードアーティスト)。『アイマス』シリーズのうち、この『ミリシタ』の運用が開始されてから3年が経過した中で、キャラクターモデルの仕様およびチームが取り組んできた事例について語られた。

総勢52人のキャラ、約3000着の衣装、2000以上の頭部データ

家庭用はXBOXやプレステなどだが、本作はiOSやAndroidで展開。

 本作のチーム全体には100名以上が所属。そのうちビジュアルアーティストは約3分の1を占める。作業環境として使用されているDCCツール(制作ソフトやゲームエンジン)はMaya、Photoshop、Unityである。

 実装されているキャラクターモデルの衣装数は、一覧に表示のないレッスンウェア・シアターカジュアル・私服などを含めると約3000着にまで達している(昨年2019年の追加分は1501着)。またキャラクターの表情は、PS4が37~42種類であるところ、iOSやAndroidで展開している本作は28種類になっている。

52人なので新規仕様や仕様変更が1つ発生すると作業が52倍……。

 衣装や表情のほかにも、髪のハイライト制御や「ソウルシステム」(各モデルの体型などで使用)といった、新規仕様や仕様変更の際に発生する修正箇所は多い。キャラクターは家庭用(PS4など)では13人のところ、本作では52人を管理せねばならず、コストや工数の削減、バグへの対応のために共通化・効率化を図っている。

 そして本作独自の仕様として、体とは別に独立した頭部のデータもある。これは家庭用の仕様を全て流用するとフレーム落ちが発生するためで、現在2000以上のデータが存在している。このほか「マスターランク5」「アナザー衣装」「リザルト画面」などの仕様についても語られた。

お客様(ユーザー)にとってカワイイものになっているのかをチェック。

 一方で分散させているチェック体制もあり、モデルの造形はリーダー、骨の挙動はサブリーダーが担当する。こちらは衣装数が多いのもあるが、“カワイイは正義”として、衣装のシルエットやアクセサリーなどのクオリティーを確認するためでもある。さらに最終的に自分たちの作業がどのようにアップデートされるのか、各セクションの作業担当者が集まって気さくに意見を言い合う「最高確認会」も欠かせない。

 それらを踏まえたうえで終盤で語られた「運営での心構え」は、含蓄のあるものになっていた。「ゲーム作成は設計が全てで、最初の設計が後々のフットワークを決めてしまうと言っても過言ではない」と阿部。「『アイマス』シリーズで成熟された仕組みがベースにあり、大量生産も何とか可能だったが、もしこの仕組みがないまま大量生産を行った場合、今よりももっと多くの人員が必要となり、その分だけ管理コストや起用コストも膨大にあがることで、チームがおそらく破綻する可能性が高かった」と評した。

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