iPhone 12に「スーパーサイクル」は来ない? 9月8日に「何か」が発表される可能性大
近日中に何らかの発表があると思われるiPhone 12シリーズに対して、市場関係者は早くも出荷数の予測に関心を寄せている。同シリーズは5Gスマホを世界的に普及させる役割を担うと思われてきたが、現在も続く未曾有の災厄の悪影響を受けそうだ。
WeChat禁止ならばiPhone全シリーズに打撃
台湾のテック系メディア『Digi Times』傘下の研究所は8月31日、iPhone 12シリーズの出荷数予想を発表した。その発表によれば、2020年後半における同シリーズの出荷数は6,300~6,800万台と予想される。この予測値は2019年後半におけるiPhone 11シリーズの出荷数より500万台以上少ない。
2020年後半におけるiPhone 12シリーズの出荷数が控えめに予想される理由は、コロナ禍によって出荷時期が例年より遅れるためだ。既報のように、Appleは2020年4~6月期の決算報告会において、同シリーズの販売開始が例年より数週間遅れることを認めている。
発売時期の遅れのほかにも、深刻な懸念材料がある。8月6日、トランプ大統領は動画投稿アプリ「TikTok」とメッセージングアプリ「WeChat」を禁止する大統領令に署名し、署名後45日後にあたる9月中旬以降には禁止措置が有効となる。禁止措置の有効に伴いWeChatが中国のApp Storeから削除された場合、もしくはiPhoneにプリインストールされなく場合、2020年におけるiPhone全シリーズの出荷数が当初の1億9,000万台から10%減少すると予想される。
iPhone 12シリーズに関しては、5G対応スマホへの買い替え需要により記録的な販売数となる「スーパーサイクル」が発生すると考えられてきた。しかし、こうした予想は実現しないようだ。
ミリ波対応基地局がなければ...…
Appleニュース専門メディア『9to5Mac』は1日付の記事で、Apple製品の予想で著名なアナリストMing-Chi Kuo氏のiPhone 12シリーズに関するレポートを報じている。同氏のレポートでは、同シリーズの5G対応について論じられている。
iPhone 12シリーズは4機種リリースされ、そのすべてが5Gに対応するというのが定説である。もっとも、下位2機種(iPhone 12/12 Max)はsub6帯域のみに対応するのに対して、上位2機種(iPhone 12 Pro/Pro Max)はミリ波帯域にも対応すると言われている。ミリ波は利用地域が都市部に限定されるものも、sub6より大容量の通信が可能となる。それゆえ、ミリ波対応は上位2機種の魅力のひとつと考えられている。
Kuo氏によると、ミリ波に対応した基地局の整備が、コロナ禍のために世界的に遅れている。それゆえ、iPhone 12上位2機種を購入するメリットが相対的に薄れ、出荷数も当初の予想を下回ることとなる。具体的には2020年における上位2機種の出荷数は1,000~2,000万台、2021年には4,000~5,000万台と予想されていたのに対し、同氏は2020年に400~600万台、2021年に2,500~5,000万台と予想を大幅に下方修正している。
ちなみに、日本における5G整備状況に関しては、マイナビニュースの8月25日付の記事で詳しく報じられている。この記事によると、国内3大キャリアは迅速な5Gエリア拡大のために4G基地局を5G基地局に転用することを計画しているが、転用された5G基地局では本来想定されている大容量通信が実現できないという問題が生じる、とのこと。日本で快適に5G通信を利用できるようになるのは、まだ先の話のようだ。