消費サイクルが速まる中、MVはロングラン傾向に 個人・スタジオ制作の間で探る解決の糸口

 安価なソフトでも高機能なものが増加したことで、アニメーション制作のハードルが低くなったと言われて久しい。その一方、それなりのクオリティーの作品を制作するとなると、依然としてハードルは高いままである。

 ただ尺の長い作品かつ分業が前提のワークフローだと、かえってMVやCMのような尺の短い作品では、制作に手間取ってしまうケースもある。その解決の糸口は、個人レベルで複数の制作工程を担当できるようになったところにもヒントがある。

スペシャリスト、ジェネラリスト、それとも監督? 問われる適性

EveのMV『いのちの食べ方』 マンガ家としても活躍する監督の安井万里絵は昨年、自主制作『朱』が話題に。

 それなりのクオリティーの作品としてイメージされるのは、やはり長編映画や30分枠のテレビシリーズである。個人レベルでも尺の長い作品を制作することは可能だが、イメージされるクオリティーとなると、予算や納期を度外視した話になる。

 尺の短い作品であっても、話題になれば長編化やシリーズ化の原作となるケースや、新規で作品を制作するきっかけを得るケースが発生することもある。しかし自身の作品の監督としてではなく、別の監督作品にスタッフとして参加するケースが多いのが実情だ。

YOASOBIのMV『たぶん』 監督の南條沙歩は自主制作では『微熱』『ニニ』など、MVではウォルピスカーターを何作か担当。

 また作品を就職活動の際にポートフォリオとして加えておくとしても、自身が得意とする工程や希望する職種を絞り込んで明確にしておく必要がある。各工程のうち、どれを最終的に希望するのか。得意な工程が複数の場合は悩ましい。

 個人レベルで仕事を受注できているケースであれ、スキルアップしたいと考えるなら就活と同じく、尺の長い作品を手がけるスタジオに入るという選択肢も出てくるだろう。いずれにしても長期的には、とある問題に直面することになる。

ずっと真夜中でいいのに。のMV『MILABO』 監督のWabokuは“ずとまよ”の他にもやEveなどのMVなどを何作か担当。

 それは1つの工程に特化したスペシャリスト、複数の工程を担当できるジェネラリスト、演出を希望して出世していく監督という3パターンの問題である。個人レベルでは曖昧だった自身の適正を、大所帯であるほど考えさせられてしまうからだ。

 大所帯のスタジオでも、案件や企画に応じて柔軟に対応できるのであればよいだろう。そして何よりそうしたクリエイターとも付き合いがあり、人材のキャスティングに長けたプロデューサーの存在も欠かせない。

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