有料ライブ配信が支える“コロナ時代のエンタメ”とは? ZAIKOが語るチケット販売最前線
5Gとの好相性、そして有料ライブ配信の可能性は多ジャンルに
ーー 今年1月には須田景凪さんがau 5Gを活用して、ライブ会場から離れたところにいるファンが会場の映像を観ながらインタラクティブに参加できるライブイベント『uP!!!NEXT 須田景凪〜晩翠〜 powered by au 5G』も行なっています。
大野:ライブ配信と5Gの相性という面で、そういったテクノロジーの活用例が実際にあることに、今後の有料ライブ配信の可能性を感じています。
ーー では、逆に有料ライブ配信を行うアーティストやオーガナイザーなど、配信者にとっての有料配信のメリットはありますか? 例えば、ZAIKOで販売されている『スタンダップコメディライブ:おはようインコさんその5.5』の有料配信では、アーカイブなし、特典付きなど内容に応じてチケット価格が異なる価格で販売されています。
大野:それに関しては、リアルイベントでも例えば会場の席の種類によってチケット価格が違うことと同じようなことなので、オンラインと従来のライブとで共通している点かもしれません。ただ、何組かアーティストが出演するイベントで目当てのアーティスト1組だけを観たい場合も、リアルイベントではイベント単位でチケットを購入する必要がありますが、有料ライブ配信であれば、アーティスト単位でチケットを設定して販売することも可能です。そういったイベントを主催する側がファンのニーズに応えるための細かい設定を、配信者側が全て行えるのも魅力のひとつだと言えます。
またZAIKOでは、配信に関するユーザーデータも提供しているので、配信者はそれを分析することでオーディエンスの傾向を掴み、次の配信の施策立案に活かすことができます。例えば投げ銭機能では「どのタイミングでどのくらいのオーディエンスが投げ銭を行なったか」をデータとして把握することが可能で、それを配信者が戦略として活かすことができるなど、マーケティングツールとしての強みを持っています。
ーー ZAIKOでは音楽を始めeスポーツ、インバウンドなど様々なイベントのチケットをこれまでに取り扱ってきましたが、現段階ではリアルイベントの開催はまだまだ厳しいという見解もあります。そのような状況ですが、今後サービスとしてはどのような展望をお持ちですか?
大野:インバウンドで言えば、旅行代理店の知人からは「観光客が戻ってくるのは来年の春以降になるかも」と聞いているので、依然厳しい状況は続くと思います。とはいえ、アフターコロナの世界でも、観光客にとって日本が魅力的な国であることは変わらないはずなので、そういった人の気持ちを繫ぎ止めるために、どうやって日本の魅力を伝えていくかを考える必要があります。そのために日本の観光スポット紹介にライブ配信を活用することなどは、旅行業界や各自治体とも連携して進めていきたいと思っていますし、eスポーツやファッション業界と連携していくことも考えています。弊社は元々iFLYERという音楽メディアからスタートしているため、現状、音楽コンテンツが多くなっていますが、今後はリソースも増やして、音楽以外のところでも関係を作っていけるようにしたいですね。
ーー 色々な業界と連携していくとのことですが、すでにこれまでZAIKOで取り扱ってこなかったジャンルの有料配信チケットで販売されているものの中にはどのようなものがありますか?
根岸:落語のようなこれまでお付き合いがなかった大衆芸能やお笑い芸人のネタ見せ、トークショーの配信に活用していただいたり、演劇では私立恵比寿中学さんの舞台公演を全5回にわたって配信するのに活用していただきました。この公演ではアフタートークも毎回メンバーを変えて配信したり、それを視聴している視聴者のコメントを拾ったりすることでファンとのコミュケーションの場としても利用されるなど配信ならではの試みが行われています。
大野:4月27日には、有料ライブ配信機能に主催者がセルフでライブ配信とチケット販売することを可能にした新ツール『ZAIKOストリーミング』の提供を開始しました。従来のサービスではZAIKOでライブ配信イベントを開催する場合、ZAIKO上でのアカウント登録や、イベントやチケットの設定を個別で行う必要がありましたが、この機能により、イベント主催者が特設ページのフォームからイベントの必要情報を記入し申請、承認されたイベントが予定した時刻にライブ配信をセルフでスタートすることが可能となります。これによりイベント主催者は、より自由にライブ配信イベントを開催することができます。
ーー 有料ライブ配信チケットを販売する場合、著作権に対する懸念から二の足を踏んでいるという声も一部であがってますが、ZAIKOのシステムを利用してライブ配信する場合、著作権処理はどのように行われるのでしょうか?
根岸:弊社ではJASRACとインタラクティブ配信に関する包括契約を結んでおり、例えば配信時に利用された楽曲の使用料が権利者に還元される仕組みを整えています。今、社会全体でもともと問題になっていたことが浮き彫りになっていますが、このこともそれに関係してくることだと思っています。
著作権と著作隣接権では管理団体が別であったり、レコード会社によって対応が違う場合もあり、弊社のようなプラットフォーマーでは解決できない問題もあります。そういった中で事業者の方とお話ししていると、これをきっかけに何か変わるかもしれないという意見をよく聞きますが、それは「ここで変えないとみんなが倒れてしまう」という懸念の裏返しでもあります。ただ、ボジティブに考えた場合、今のようにライブができないとなった時にこそ、新しい社会のシステムができあがっていくきっかけが生まれると捉えています。
この問題に関してはおそらくYouTubeのようなストリーミングサービスが出てきた時と似たような状況で、実際にYouTubeがJASRACやNexToneの著作権管理団体と契約するまでにはすごく時間がかかっています。ですから、実際はジャンルによっては今すぐ有料ライブ配信に踏み切れないということも事実としてあります。しかしながら、それに関してはみんなが連帯して問題解決のために働きかけることで変わっていく部分かと思います。
弊社の考えとしてはミュージシャンやアーティストたちが作品からしっかり利益を得るためにも今ある制度や権利団体に対しては敬意は払いつつも、現在のような緊急事態になった時に既存のルールのせいで何もできないというのは違うと認識があります。こういった問題に対して、状況を変えていくために行動するというスタンスをとる弊社だからこそ、有料配信チケット販売システムの開発が早かったのだと思ってます。また問題に対して、どこをクリアすればいいのか? ということに関してはいつも社内や社外の方と話し合っていますが、今後はこの部分に関しても色々な変化が訪れると考えています。
大野:日本はそういった面でガチガチになっていることが足枷になっていて、海外展開などが遅れていることが事実としてありますが、実際に内閣府のワーキング・グループや政府と連携しながら今後、どうやって日本のサービスや良さを海外展開していくのかについても話してあっています。弊社としてはそういった流れに添いながら、事業を進めています。
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