『映像研』や『ブルーピリオド』など“学生の創作”題材のマンガが話題 卒業生の制作したアニメーションにも注目

 このところアニメ化・実写化が立て続いている『映像研には手を出すな!』や、マンガ大賞2020で首位に選ばれた『ブルーピリオド』など、学生の創作をテーマとしたマンガに脚光が当たっている。

 まさに入学シーズンを迎えた今、アニメーションには出身者が在学中に制作した作品、卒業後に制作している作品として、どのようなものがあるのだろうか。最近の事例を中心に取り上げながら紹介していきたい。

学生のアニメーション作品を俯瞰できる「ICAF」 先陣を切った多摩美術大学

 2000年代に入って以降、デジタル化の一環としてアニメーション教育に力を入れる高校や大学も増えた。その多くは美術・芸術系であるものの、アニメーションの名を冠した学科・領域・専攻・コースは今や馴染みのあるものになっている。

 大学では2003年に初めて東京工芸大学にアニメーション学科、東京造形大学にアニメーション専攻が設置された。学生のアニメーションでは、このほか東京藝術大学・多摩美術大学・武蔵野美術大学などの作品が知られている。

『ギャルと恐竜』アニメ版PV【4月4日(土)25時放送開始】。シリーズ監督の青木純は大学時代に『コタツネコ』や『将棋アワー』など、多作で知られていた。

 実際にその5大学を幹事校として「ICAF(インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル)」も開催されており、さながら合同で東京五美大展を実施している多摩美・女子美術大学・造形大・日本大学藝術学部・武蔵美のような座組だ。

 例えば東京藝大の出身でも、この4月から放送となった『ギャルと恐竜』のアニメパートにて、シリーズ監督を務める青木純(スペースネコカンパニー)はデザイン科だ。本作では『ポプテピピック』の時と同じく神風動画と共同で制作を担当している。

『ジュラしっく!(Jurassic!)』本編ショートムービー。監督の石谷恵は、大学院の修了制作『かたすみの鱗』でも恐竜を題材としていた。

 なお東京藝大には、学部ではなく大学院にアニメーション専攻がある。昨年、東映アニメーション所属で短編『ジュラしっく!』を監督した石谷恵が出身だが、学部在籍時は先端芸術表現科だった。『ドラゴンボール超』などの参加履歴を思うと、振り幅は大きい。

 多摩美ではグラフィックデザイン学科と情報デザイン学科の作品がよく見られる。特にグラフィックデザイン学科は現在の学生によるアニメーション制作ブームの礎であり、出身の加藤久仁生は2009年に短編『つみきのいえ』でアカデミー賞の受賞にも至った。

米津玄師 MV『パプリカ』Kenshi Yonezu / Paprika。監督の加藤隆は、大学院は東京藝大のデザイン科だった。2016、17年は「報道ステーション」のオープニングも制作。

 その加藤は、NHK「みんなのうた」2020年4月・5月の新曲で『カイト』(歌:嵐、作詞・作曲:米津玄師)のアニメーションを監督した(この『カイト』は昨年の第70回NHK紅白歌合戦で初披露されたもので、2月・3月にはその際の映像が先に使用されていた)。

 このほか同じくNHK「みんなのうた」で昨年の8月・9月で『パプリカ』(歌・作詞・作曲:米津玄師)のアニメーションを監督した加藤隆、2018年にKing GnuのアニメーションMV『Prayer X』を監督した山田遼志など、多数の出身者が活躍している。

『その先の旅路』(山口真依)| Journey to the beyond (Mai YAMAGUCHI)。本作は多摩美術大学グラフィックデザイン学科の卒業制作(2019年)。

 また、武蔵美では2018年にサザンオールスターズのMV『闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて』でアニメーションディレクターを務めた今津良樹も卒業生のひとりだ。学部在籍時は視覚伝達デザイン学科だが、大学院は東京藝大のアニメーション専攻に進学している。

 このICAFでは、もちろん女子美や日藝も含め、各校の作品を観ることができる。とはいえ上記のような事例だけでなく、アニメーションを専門に学ぶ環境でなくても、彫刻学科で3DCG作品、写真学科でコマ撮り作品が制作されるなどの例もあり、多彩で奥深い。

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