収益は大幅減、顧客は遠のくばかり……世界最大ゲーム販売店『GameStop』従業員の嘆き

興奮と笑いに満ちたあの場所はもう……

 『コール・オブ・デューティー』や『MADDEN』といった人気タイトルの発売日には、深夜にも関わらずゲーマー達が店をぐるりと一周するほどの長い列をなして、その瞬間を今か今かと待ちわびたものでした。まるでお祭り騒ぎで、音楽をならし食べ物を提供し、興奮と笑いに満ち溢れていました。しかし、今では『MADDEN』の新作でも並んで20人ほど……。先行予約ですら、5年前の半分も入らなかったといいます。

 もう、GameStopにあの頃の面影はありません。 従業員の就労時間を短くなったことで、店内の陳列やディスプレイに費やす時間が大幅に減りました。店内な常に整頓されておらず、汚れた印象を受けます。また、店をワンオペで回していることも多々あるため、長時間労働にサービス残業で従業員の満足度も非常に低いと打ち明けたスタッフもいたようです。

デジタルをめぐる葛藤

 デジタルのゲームが小売店の経営を圧迫している一方、GameStopはデジタルの恩恵にあやからずにはいられない葛藤があります。ある従業員は「『Fortnite』がゲーム業界を殺しにきている」と言います。というのも、18歳以下のゲーマーは『Fortnite』しかプレイしておらず、GameStopには『Fortnite』のゲーム内課金バウチャーを買いにはくるけれど、他には見向きもしないそうです。店舗内のスペースを取らない通貨カードはいい収入源になりそうですが、それは早計かもしれません。

 「デジタルカードを販売するのはやめた方がいいと何度も進言しました」Polygonのインタビューに応じた、あるマネージャーは語気を強めます。「あれは利益が少ないのです。しかし多くの収入を得ることができるからと販売するように言われています。バランスシート上ではよく見えるんです」

 しかし、一見よく見えるサイクルも長期的ではありません。通貨カードが売れても、そのカードが使われる先はデジタルストアです。結局、目先の利益に目を奪われてGameStopは自分たちの首を絞めていることになるのです。

「デジタルに慣れれば、物理的なソフトに戻ろうとは思わないでしょう。デジタルには中古販売なんてシステムはありません。そして価格は小売店といい勝負。小売店の顧客基盤は、カードやグッズを求める親と、毎年出てくる『コール・オブ・デューティー』や『Madden』シリーズのコアファンだけになっていくと思います」

グッズをめぐる葛藤

 マネージャー達はグッズ販売にも懸念を抱いているそう。既に退職したあるマネージャーは、GameStopはゲームよりも関連グッズ販売で成功していると話します。ゲームを売っても利益は20パーセントですが、グッズは50パーセントと利益率も高いので、同社が生き残るためのグッズに注力するのはいいことであると考える一方で、管理者たちは落ち着いた判断をするべきだと考えているようです。

「ゲームからコレクタブルに注力するようになりました。しかし、ひとつでも売ると、すぐに大量のアイテムを送ってくるのです。在庫過多となり、自分のところではFunkoの箱が倉庫に山積みになっていました。仕入れ班は少し落ち着いて様子を見るべきだと思います」

従業員達の願い

 GameStopはしばしば「絶滅するであろう小売店」の代表としてメディアで紹介されることがあります。Netflixを代表するストリーミングが主流になった時にあっという間に店舗数を減らし、2013年に倒産に追い込まれた米レンタルチェーン店Blockbusterを知る人なら、GameStopの状況も危うく感じられるのは当然です。しかし、従業員は言います。

「GameStopの状況が正しく世の中に伝えられることを願って止みません。私たちの全てが悪いわけではなく、必死に努力しているのです。シニアマネージャーは素晴らしく、従業員を正しく導こうと最善を尽くしてくれています」

 しかし、会社の戦略と見通しの甘さについては、Polygonがインタビューをした人たちのほぼ全てから否定的な意見が出てきたそうです。そして、彼らが切に願うのは、店舗で働いた経験を持ち、店舗マネージャーの意見にしっかりと耳を傾けてくれる上級管理者が現れることです。

「(上級管理者は)従業員の言葉を聞いてくれません。店で働いた経験をもち、マネージャーの意見を聞いてくれる人が必要です。私は(倒産した小売店チェーンで)働いた経験があります。GameStopはそこまでの状況になっていませんが、それに近づいているサインははっきりと見えています」

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