ハチ公や須田景凪ライブで実験的試み KDDIが渋谷で繰り広げた“5G時代のエンタメ×テック”

 2020年3月に予定している第5世代移動通信システム「5G」のサービス開始に先駆けて、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」が発足。1月24日と25日の2日間、その開始記者会見に加えて、渋谷の街を舞台にau 5Gを活用した様々な施策が行なわれた。

 ここ数年注目が集まる「5G」。とはいえ、言葉自体は耳にしたことがあるものの、導入によって何が変わるのかについては、よく理解していない人も多いのではないだろうか。簡単に言うと、5Gにおいては通信可能なデータ容量と速度が飛躍的に上がり、「大容量超高速性」「低遅延性」「多接続性」の3点で、従来とは大きく異なるサービスが可能になる。つまり、これまでは体験不可能だった「より高画質で大容量のコンテンツを」「よりラグのない形で」「より多くの人々が同時に」体験できることが、5Gを使ったサービスの特徴だ。

 今回スタートした「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」は、KDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会によって昨年立ち上がった「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」を母体に、その3者と様々な企業との協力によって進められていく官民連携型のプロジェクト。日本のカルチャーの中心地のひとつであると同時に、日本有数の来訪者数を誇る街=東京都渋谷区を舞台に、au 5Gを活用した様々なサービスを展開していくという。

 24日に行なわれた記者会見では、渋谷区長の長谷部健氏や、KDDI株式会社の取締役執行役員常務・森田圭氏、渋谷未来デザインのフューチャーデザイナーを担当する若槻千夏氏、渋谷区観光協会の代表理事・金山淳吾氏、渋谷区道玄坂商店街振興組合理事長の大西賢治氏らが登壇。このプロジェクトのビジョンや理念、プロジェクトへの期待が語られた。

 中でも印象的だったのは、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」のビジョンを紹介する中で語られた、「渋谷区すべてをエキシビジョンと考える」というKDDI株式会社ビジネスアグリゲーション本部アグリゲーション推進部部長の繁田光平氏による言葉。渋谷というリアルな街を舞台にして、「現実を拡張する」ことがこのプロジェクトの肝と言える。

 今回はその施策のひとつとして、24日~25日の2日間、渋谷ハチ公前にau 5Gの可搬型基地局を設置。ライゾマティクス・アーキテクチャの齋藤精一氏監修のもと、1964 TOKYO VRやPsychic VR Labと連携し、2020年の渋谷駅前の風景にスマートフォンをかざすと「1964年の渋谷の街並みへとタイムスリップできる」XR体験ブースが登場した。5Gスマートフォン内で立ち上げたVR/AR/MRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を使って街を見渡せば、1度目の東京オリンピックが開催された1964年当時の渋谷と、2度目の東京オリンピックの開催が目前に迫る現在=2020年の渋谷の風景を自由に行き来することができる。

 このサービスで再現された1964年の渋谷の街並みには、1964 TOKYO VRに寄せられた膨大な数の写真から再現された大容量の3Dモデルが活用されている。とはいえ、コンテンツのダウンロードは非常にスムーズで、5Gの帯域を利用することにより、アプリで読み込んで数秒のうちに体験をはじめることが可能。1964年と現在との違いと、当時から変わらない要素との両方が楽しめる。目の前の景色の今と約56年前の姿を通して、渋谷が重ねてきた年月を追体験するような感覚だ。

 また、特に素晴らしいと感じたのは、画面内に設けられた「1964年」と「2020年」を切り替えるバーをタッチして左右に動かす際に、1964年と2020年の風景が一瞬で切り替わるのではなく、手の操作と連動して、両者がグラデーションを伴って切り替わっていくこと。この複雑な映像処理は、まさに大容量データを超高速処理できる5Gならではのものだ。

 同日夜には昨年12月5日に渋谷駅西口前にオープンした「渋谷フクラス」内の「東急プラザ渋谷」にある総合エンターテインメントレストラン「CE LA VI(セラヴィ)東京」で、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」のキックオフパーティを開催。ここでは1991年から2001年までUnderworldに在籍し、同ユニットのテクノ/ハウス路線を推し進めたDarren Emersonの他、Ken Ishii、LicaxxxがDJを担当。渋谷の街を臨む高層階のバースペースを舞台に、渋谷らしいストリート感覚を感じさせるパーティが開催された。“エンタメ×テック”を掲げるプロジェクトにおいて、ビジネス的な施策とストリートの視点を持ち合わせていることは重要かもしれない、

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