連載:ゴールデンボンバー歌広場淳の「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」
歌広場淳が2019年のeスポーツを総括! 2020年以降のキーワードは「でも、やるんだよ」
大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は2019年のeスポーツシーンを総括し、2020年以降への展望を語ってもらった。独自の視点でシーンを眺め、ゲームに取り組んできた歌広場淳が語るキーワード「でも、やるんだよ」の意味とは?(編集部)
eスポーツは「甲子園」から「ペナントレース」へ
「eスポーツ」というシーンに起承転結があるなら、その“元年”と言えた2018年が「起」にあたって、2019年はそれを受けた「承」にあたるタームだったと思います。言い換えれば、2018年は元年ならではの期待と興奮、そして緊張感がありましたが、2019年はそれに比べて、ルールやガイドラインが整備されていくなかで“遊び”ができ、プレイヤーが伸び伸びとゲームを楽しんでいたような気がします。
「大会賞金○億円!」「60分の1秒のプレイ精度!」などという、未知の存在としての“プロゲーマー”への過剰な注目は薄れ、その分、メディアで大きく特集されるような機会は減ったかもしれない。しかし一方で、コミュニティは広がり、各地域、草の根的に盛り上がりを見せました。リアルのイベントが非常に多くなって、例えば、Red Bull所属のプロゲーマー・ボンちゃんが4月から11月まで全国をまわった『Bonchan's Road Trip』は、どこに行っても大盛況。突然出てきた「eスポーツ 」というワードが、市井の人々を巻き込むようになった……とまでは言いませんが、“別世界”の話から“生活”により近いものになったように思います。僕の冠番組でもある『格ゲー喫茶ハメじゅん』(TOKYO MX)でも、派手な話題よりプロゲーマーの人間性に迫るようなトークが多く、それが許されるのも、「一過性のブーム」という段階が過ぎたからだろうと。
そういう意味で印象的だったのは、eスポーツ専門会社・ウェルプレイドの代表を務める谷田優也さんの主催により、新宿ロフトプラスワンで開かれている『ゆるふわeスポーツ座談会』というイベントに参加したときのことです。ゲーマーは、eスポーツをビジネスという観点から捉えている人を毛嫌いする傾向がありますが、しかし市場を成り立たせてくれる人がいなければ、ゲームをする場自体がどんどん縮小していくのは間違いなく、僕もそういうことをきちんと語る場に行ってみたかった。だからこのイベントに参加したのですが、実際はゲーム好きのおじさんたちが、お酒を飲みながら楽しくしゃべる、というゆるい空気感でした(笑)。
しかし、これが本当に興味深かった。例えば、「ゲームについてまったく知識のないギャルに、eスポーツの魅力を誰が一番うまくプレゼンできるか」という企画がありました。要するに、「eスポーツをいかに一般層まで広げるか」という、業界の人々が頭を悩ませてきたことを極端にわかりやすく企画化したもので、これはプレイヤーも含め、ゲームにかかわる人たちに「このチャンスを逃してはいけない」という切迫感があった2018年では、成立しなかったものだと思います。
ちなみに、プレゼンのなかでギャルの人たちが最も感動していたのは、『League of Legends』というオンラインゲームの世界大会で、敗者の側にフォーカスした動画でした。その人がどんなプレイヤーで、どんなものを背負って戦っていたのか。ドキュメンタリーのような内容で、ギャルたちはそれを“人間ドラマ”として受け取り、感動していたんです。その他、イケメンキャラクターに焦点を当ててみた動画もあったりして、ギャルのみんなは度々「ウケる」と言っていたので、「僕らがやっていることはウケるんだ!」と思って、ちょっと自信が持てました(笑)。
この取り組みは、僕がやりたいこととも一致しています。今年加入した、総合ゲームエンタメ集団THE REBEL'S eMPIRE GAMING PROJECT= ReMG(レムジー)のYouTubeチャンネルで、「最強のエアー」という対戦解説動画をやっているのですが、これも、ゲームのことは全くわからなくても、観ていて「ちょっと面白いかも」と思えるものを目指しているので。「なんとかゲーム人口を増やさなければ」「もっと関心を持ってもらわなければ」と、焦ってハードルの高いことをしようとするのではなく、“遊び”を持って楽しさを伝える。それが一番広く届けられる方法だと思うんです。
繰り返しますが、いまのeスポーツは「このチャンスを逃したら終わりだ」という、トーナメント制の甲子園のようなブームではない。むしろ、一度失敗しても、最終的に高い勝率を残せば優勝できるペナントレースのような状況になってきている気がします。手段を問わず勝ちに行くほど切迫していないし、時には、短期的な利益を捨てても、長期的な視座に立って布石を打つことも重要かもしれない。東京オリンピックに合わせてeスポーツにも注目が集まり、飛躍の年にしなければいけない2020年に向けて、準備が進んできたように見えます。