連載:音楽機材とテクノロジー(第四回)mabanua

mabanuaが古賀健一&村田研治と考える“スタジオの音作りに欠かせない要素”「身体で感じるローの部分が重要」

「音楽そのものには適正な低域の量がある」(mabanua) 

デスクで作業をしていても日の光が差してくるため、開放感を感じながら作業ができるのも大きな特徴だ。

――後藤さんの取材でも話題になった超低域(スーパーロー)についても、このスタジオを作る上ではある程度考えたんじゃないかなと思うのですが。

mabanua:僕は、色々悩んで最近辿り着いた結論があって。音楽そのものには適正な低域の量があるということと、低音は音のスピード自体が遅いので、高域に比べてかなりテンポに関わってくるということ。例えば、The StrokesやFranz Ferdinandは低音がない方が音が軽やかになったり、Foo Fightersなんかはローが無いとそれらしさが出なかったり。

――ヘヴィロック派生のものだとローが強くないといけないし、腰の高いジャキジャキしたギターロックの派生形だと、低音が少ない方が動いてる感が出る、みたいな。

mabanua:そうなんですよ。だから何でもかんでもローがあった方がいい、ない方がいい、というのは違うんです。ただ、ポップスではローがあるものとないものが混在していたけど、今はHIPHOPの影響もあって、ポップスの領域でもスーパーローのあるものがトレンド的に増えている。そこで改めて、身体で感じるローの部分が重要なんだ、ということに後藤さんや古賀さん、村田さんのお話を聞いていて気づかされました。

古賀:低域が必要かどうかについては、その音が出るスピーカーと出る環境を作らないことには判断できないと思っています。なので、そこの正しい判断ができるスタジオ、モニター環境を作るということが重要だし、恥ずかしながら、日本にはそんな環境はあまり多くないんです。

――海外ではその環境が当たり前にあって、日本ではそうでもない、というのに気づいたのがここ数年の出来事なんですね。

古賀:僕は10年くらい違和感があって、気づいたのは3年前くらいです。

村田:僕はレコーディングエンジニアをやっていたころから思っていたことなので、かれこれ40年くらい前からですかね。そのころは「わかってはいたけどできなかった」ことなんです。

古賀:40年前にそう感じていた人がいることが、本当にビックリです。

村田:でも、このスタジオを作りながら、かなり色々なものを試すことができたんですよ。この部屋は現地で大工さんに「こう作ってほしい」と説明して、お願いして作ってもらいました。吸音の構造は図面を渡しても理解するのが難しくて違うものが出来てしまうことが多いんです。次に作るスタジオは吸音構造もはめ込み型のパッケージにしてしまおう、壁の裏側に嵌めればOKという風にしてしまおうと考えるようになりました。

古賀:このスタジオを作りながら、色んなものがまた生まれてますね。本当は今日に合わせてまたSALogicの新製品がひとつ届くはずだったんです。同じ志を持ったエンジニアの仲間たちからの要望を村田さんに伝えて、開発に2年かけてくださってるもので、これができれば、救われる都内のスタジオはいっぱいあると思います。

――ちなみに、どんな新製品なんですか。

村田:100Hz~200Hz付近の伝送特性が凹むところを直すもの。試作ではうまくいってるけど、製品の形にしたときにまだズレがあって、そこを直したら完成です。

古賀:そうすると、日本のスタジオのグレードがまた上がるはず。これも、色々なデータが集まってきてわかったことではあります。から。

mabanua:結局このスタジオも、良い意味で村田さんのトライアンドエラーの通過点なんです。建物って、3回作らなきゃわからないってよく言いますし、スタジオなんか10回20回作っても、ずっと発見があるだろうから、そのうちの一つになれたことがすごく嬉しいんですよね。村田さんのホームページ見ると、スタジオの施工例がちょっとずつ増えてきているので、もっと伝染してほしいなと思います。

(取材・文=中村拓海/撮影=はぎひさこ)

Ovall『Ovall』

■リリース情報
『Ovall』
12月4日(水)発売
CD(通常盤)2,500円+税
2CD(限定盤)3,000円+税

<収録曲>
DISC1:
01. Stargazer
02. Transcend feat. Armi (Up Dharma Down)
03. Dark Gold
04. Come Together
05. Slow Motion Town
06. Triangular Pyramid
07. Paranoia
08. Rush Current
09. Desert Flower

DISC2:(限定盤のみ)
1. Stargazer Rework (Produced by HIKARU ARATA, Vocal by KENTO NAGATSUKA from WONK)
2. Transcend feat. Armi (Up Dharma Down) (Kan Sano Remix)
3. Come Together (Nenashi Rework)

■ツアー情報
Ovall Tour 2020
3月15日(日)群馬 Block※ SOLD OUT
4月5日(日)大阪(TBA.)
4月25日(土)福岡 The Voodoo Lounge
4月26日(日)愛知 CLUB UPSET
5月31日(日)東京 O-EAST <origami SAI>

<出演>
Ovall/Kan Sano/mabanua/Michael Kaneko/Nenashi/関口シンゴ and more

Ovall Official Website

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