Netflix、YouTubeが失速? Apple、ディズニー参戦で新時代迎える“動画ストリーミング戦争”の裏側

 さらに競争を活性化させているのが、サービスの月額料金だ。Apple TV+は月額600円(アメリカでは4.99ドル)だ。Disney+は6.99ドルと、これまで一般的だとされてきた価格帯よりも大幅な値下げした価格で勝負。Netflixはアメリカでは現在、8.99ドル、12.99ドル、15.99ドルの価格で提供している。

 アップルはまた、Apple TV+をApple Musicなどとパッケージにしたバンドル戦略を本格化すると噂されている。ディズニーはすでにDisney+とHulu、ESPN+のバンドルを12.99ドルで提供し始めた。バンドルとは少し異なるが、アマゾンはプライム会員向けにさまざまなサービスの組み合わせや価格帯を豊富に揃えた選択肢を提供することで、成功を収めてきたことはすでに誰もが知るところだ。今後アメリカや海外市場では、会員獲得に向けて価格競争、バンドル販売が一つの焦点になっていくと予想される。日本ではこうしたバンドルはまだ定着していないが、先日NTTドコモとアマゾンジャパンがアマゾン・プライムを無料で提供する発表を行ったばかりで、国内での主要ストリーミング企業の展開が注目される。

参考:アマゾンプライム1年間無料 ドコモ 利用者向けに | NHKニュース

 一方で興味深いことに、NetflixもYouTubeも平均試聴時間は伸びていくとの見通しだ。Netflixは2019年の29分から2020年には30分、YouTubeは23分から24分と、一日でプラットフォームに接触する時間が増え続けるとされている。

 これはアメリカ人のデジタル・コンテンツ消費が動画にシフトしている現状と関係する。2020年にはアメリカ人の動画消費時間が一日108分まで増えると予想され、過去数年と比較しても、2019年から8%、2018年からはなんと20%も伸びているのだ。

 NetflixのCEOリード・ヘイスティングスは11月、ニューヨーク・タイムズが主催したカンファレンスに登場し「会員数ではストリーミング戦争を勝ち抜けない」と述べ、視聴時間こそが競争を測る本当のベンチマークだと強調した。この発言の裏側には勿論、Netflixやウォール街の投資家対策が含まれるが、NetflixやYouTube2強だった時代が過ぎさろうとし、新たなストリーミング戦争に突入していることに間違いない。ヒット作をめぐるコンテンツやクリエイターのネームバリューとコンテンツ製作費、視聴時間と新規会員の加入の関係性は2020年代でまた見直されていくだろう。

参考:Netflix CEO Reed Hastings: Subscriber numbers are not that important

■ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、All Digital Music
デジタル音楽ジャーナリスト。音楽ブログ「All Digital Music」編集長。「世界のデジタル音楽」をテーマに、日本のメディアでは紹介されないサービスやテクノロジー、ビジネス、最新トレンドを幅広く分析し紹介する。オンラインメディアや経済誌での寄稿のほか、テレビ、ラジオなどで活動する。
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