『TikTok』運営のBytedance、なぜ音楽ストリーミングに着手? その理由を考えてみた
ByteDanceとしても、ストリーミングビジネスは企業の成長を推進するためとも考えられるが、欧米の音楽業界とライセンス契約を結び、コンテンツを確保するという狙いがより強いとみられる。TikTokで使用される楽曲のライセンス契約は、Apple MusicやSpotifyなど大手ストリーミングが音楽業界と結ぶものとは異なる契約内容のため、楽曲が使用されたアーティストへのロイヤリティ分配は「無いか、極めて低い」ことが業界の中では問題視されてきた。こうした問題の解決もできるのは、ByteDanceとしても大きいはずだ。
日本でも定着しつつあるTikTokだが、世界の音楽業界における存在感も、今年に入りさらに加速している。世界ではレコード会社の若手アーティストや、レーベルと契約をしないインディペンデントアーティストがTikTokを経由させてバイラルヒットを生み出すマーケティングキャンペーン戦略がますます増えている。
2019年を代表する世界的なヒットであるLil Nas Xの「Old Town Road」がTikTok経由でバイラルヒットに繋がったことは、すでによく知られているが、Ashnikkoの「STUPID」、エイバ・マックスの「Sweet But Psycho」、Calboyの「Envy Me」、Ambjaayの「Uno」と、TikTokで話題を集めてストリーミングでバイラル化させるアーティストだけでなく、レコード契約を実現した若手アーティストも後を絶たない。
特にアメリカでは、2019年に入ってからTikTokのユーザーが急増したことで、ヒップホップやR&B、アーバンミュージックを中心に、バイラルヒットを作れる若者とレコード契約のオファーを出すレコード会社が増えている。つまり世界の音楽業界でも、今やTikTokは無視できないほど注目度が高まっているのだ。
■ジェイ・コウガミ(デジタル音楽ジャーナリスト、All Digital Music)
デジタル音楽ジャーナリスト。音楽ブログ「All Digital Music」編集長。「世界のデジタル音楽」をテーマに、日本のメディアでは紹介されないサービスやテクノロジー、ビジネス、最新トレンドを幅広く分析し紹介する。オンラインメディアや経済誌での寄稿のほか、テレビ、ラジオなどで活動する。
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