アナログレコードにも“サスティナビリティ”の波  プラスチックごみで作る環境にやさしいレコード登場

 音楽体験の主流がSpotify、Apple Musicなどの音楽ストリーミングサービスに移行していく一方で、近年はアナログレコード人気も高まっていることは今やよく知られた話。日本でも11月3日にアナログレコードの祭典「レコードの日」が行われたほか、11月30日には東京でアナログレコードの交換会イベントが「SOUND TRADE CLUB」が行われるなど、関連イベントも多くなってきている。

 また、現在はYouTubeをきっかけに起こった世界的なシティ・ポップの再評価をきっかけに、そういったアナログレコードを求めて、渋谷や下北沢のレコード店に足を運ぶ海外からの観光客の姿を見かけることも多くなった。

 そんなアナログレコードは数年前のブーム以降、今も右肩上がりの成長を続けており、全米レコード協会(RIAA)の発表によると、アメリカでは2019年上半期の売上高は約239億円、枚数でいえば860万枚を売り上げたそうで、2018年下半期と比較して12.8%の上昇を見せている。さらに日本ではまだまだ主力といった印象があるCDと比較して見た場合、2019年上半期のCD売上高は約265億円、1860万枚であることからアナログレコードは一見するとまだまだCDには及ばないように思える。しかし、実はアナログレコードの12.8%の上昇に対し、CDは昨年下半期とは横ばい状態。そのためアメリカの業界内では今年末にはアナログレコードがCDの売り上げを上回る可能性があるとの見方もある。

 このようにじわじわと音楽体験の”第三極”として存在感を再び強めだしているアナログレコードだが、今後はそんな業界にも最近、巷でよく聞く”サスティナビリティ”という新しい波が到来するかもしれない。

 イギリスのシンガーソングライターであるNicky Mulveyは、最近、海に漂っていたプラスチックごみを回収し、それを再利用した10インチアナログレコード『IN THE ANTHROPOCENE』をリリースした。100枚限定プレスの同レコードは、Nicky Mulveyとイギリス・コーンウォールのブルワリーであるSharps Breweryとのコラボによるもので、リリースの目的は環境保護。盤面に散りばめられた回収したごみは、特殊なプレス加工により、通常のレコードプレイヤーでも再生可能になっており、アナログレコードだけでなくデジタル配信分も含めたレコード販売による収益は環境保護団体に寄付されるという。

 いま、イギリスの音楽業界でも環境保護、気候変動問題は大きな関心ごとになっており、例えば、今年、『SUMMER SONIC 2019』に出演した人気ロックバンド、The 1975は環境問題アクティビストのグレタ・トゥーンベリとコラボした楽曲を発表しているほか、ライブチケットを1枚販売につき1ポンドを植林を推進するNPO団体に寄付するなど、問題解決に向けた取り組みを行っていることで知られている。

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