量子コンピュータはIT業界とAIをどう変える? Googleや専門家の見解から考察

量子コンピュータはAIをどう変える?

2年で4倍以上の投資、「AIの冬」と同じく「量子の冬」は訪れる?

 以上のような量子コンピュータをめぐる開発競争に関して、シンギュラリティ(技術的特異点)の社会的影響を研究する組織であるシンギュラリティ大学が運営するメディア『SingularityHub』は14日に記事を公開した。量子コンピュータ開発に対してはすでに多額の資金が投資されおり、投資している企業にはGoogle、IBM、そしてIntelといったテック業界の巨人たちが名を連ねる。その投資額は2017~2018年の2年間で4億5,000万ドル(約490億円)に達し、2015~2016年における投資額である1億400万ドル(約110億円)の4倍を超える。

 量子コンピュータへの投資に対しては、一部からは過熱気味という声も挙がっている。まだ実用化には程遠い技術に対して、過剰な期待を寄せているのではないかという懸念が生じているのだ。期待が裏切られた後は、一転して失望が広がり資金が集まらなくなる可能性がある。現在注目されているAI技術でさえ、2000年代は資金が集まらない「AIの冬」を経験しており、量子コンピュータだけが例外というわけではないだろう。

 量子コンピューティングを研究開発するスタートアップを率いるマイケル・マルタ―ラー氏は、「量子の冬」を予見し恐れている一人である。同氏は、自分の立ち上げた企業が「量子の冬」が訪れる前に軌道に乗ることを望んでいる。またベンチャーキャピタルのマネージャーを務めるマシュー・キンセラ氏は量子コンピュータ事業に投資している一方で、いつでもこの事業から撤退できる準備もしている、と話している。

 量子コンピュータは不可能だったことを可能にする夢の技術である。しかし、まだ歩き出したばかりの乳児とも言える。量子コンピュータに多大な期待を寄せる前に、まずは実用化に向けてしっかり育て成長を見守るのが賢明であろう。

トップ画像出典:Google Blog「What our quantum computing milestone means」より画像を抜粋

■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。Twitter:@kohkiyoshi

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