Apple TV+、11月に約10ドルでサービス開始? 初年度から制作費60億ドルを投入
NetflixとAmazon が確固たる地位を築いている有料動画ストリーミングサービス市場に、ついにAppleが参入する。GAFAの一角を成す同社だけに、豊富力な資金を背景にして参入初年度から多額の費用を投じるようだ。
強気の価格設定
『Bloomberg』は20日、Appleが11月には有料動画ストリーミングサービス「Apple TV+」を開始すると報じた。報道の情報源は「事情に詳しい関係者」なのであるが、月額料金は9.99ドル(約1,060円)となる。この価格はNetflixとAmazon プライム・ビデオの8.99ドル(約950円)、さらには11月から開始すると言われているDisneyの動画ストリーミングサービス「Disney +」の6.99ドル(約740円)より高い、強気の価格設定となっている。
Apple TV+における主力コンテンツはオリジナル作品になると見られており、テレビドラマ『フレンズ』に出演して有名となったジェニファー・アニストンが主役を務める朝の情報番組を舞台とした『The Morning Show』、スピルバーグ監督が制作するオムニバス・ドラマ『Amazing Stories』、映画『アクアマン』で主演を務めたジェイソン・モモアが主役となるSFドラマ『See』等が制作中だ。すでに公式YouTubeチャンネルもあり、『The Morning Show』のトレーラー動画を視聴できる(下の動画参照)。
サービス開始当初は以上のコンテンツを含む少数のラインナップとなるが、その後の数ヶ月間でコンテンツを充実させる計画のようだ。そして、2020年までに500億ドル(約5兆3,000億円)の売上を目指す。なお、アナリストたちは同サービスの加入者は10年以内に1億人を突破するだろうと見ている。
1エピソードの制作費は『ゲーム・オブ・スローンズ『に匹敵
テック系メディア『The Verge』は20日、Apple TV+の制作費にフォーカスした記事を公開した。その記事によると、Appleは同サービスの年間コンテンツ制作費として初年度から60億ドル(約6,300億円)を投じている。こうした制作費はNetflixが投じている150億ドル(約1兆6,000億円)と比べると少額のように見える。しかしながら、Netflixが同サービス初期の有名オリジナル作品『ハウス・オブ・カード 野望の階段』を配信した頃には年間制作費が23億ドルだったことと比較すると、Appleが同サービスに大きな期待を寄せていることがわかる。
また、前述した『The Morning Show』や『See』の1エピソードを制作するのに1,500万ドル(約16億円)が費やされているとも報じられており、この制作費は近年世界的に大ヒットしたテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終シーズン(シーズン8)に匹敵する。
AppleがApple TV+開始初年度から多額の投資ができる背景には、同社が動画ストリーミングサービス専業企業ではなく、すでにiPhone販売をはじめとした既存業務から収益を得ていることが指摘できる。一説には、同社は2,106億ドル(約22兆4,000億円)の現金を保有しているとも言われている。とは言うものも、豊富な資本が動画ストリーミングサービスをめぐる覇権争いの勝利を約束してくれるわけではない。例えば、Appleと同様に巨大資本を抱えるGoogle傘下のYouTubeが展開する有料動画サービス「YouTube Premium」は大成功しているとは言い難い。NetflixやAmazonに勝利するには、やはり魅力的なオリジナル作品を配信することが不可欠であろう。